人間が「生きる」こと、日々「生活をする」ことについて考えていきます。中でも、とりわけ「食」を大切な要素として扱います。
例えば、私たちの食卓に欠かすことのできない食材に大豆があります。味噌や醤油といった調味料や、豆腐、納豆など、いずれも多くの食卓で必要とされる加工品です。授業ではその大豆をすり鉢ですって、きな粉を作ります。それはとても大変な作業。でも原料と格闘しながら食材を作り出すことができると、その喜びは格別です。それは「食べ物の力を自分で生み出していく」という、生活の基本的な感覚です。
「食」には、日々の生活を彩る一面もあります。日本人は昔から旬の素材を愛で、素材の彩りや香り、美しさを生かした調理方法をあみ出してきました。他方には、長寿国として知られてきた沖縄の「豚」を扱うハレの食文化があり、さらに南アジアの国々には多様なスパイスを調合するカレーの文化があります。それぞれの文化として育まれた「食」が、人間の暮らしに与えている力ははかり知れません。
授業では、その力を感じ取りながら、同時に「命ある動物の肉や植物を食べる」という行為の意味を掘り下げていきます。私たちの生活は「命をいただく」ことと切り離せないからです。
人間の生き方に正解はありません。だからこそ、長い年月をかけて生み出された生活の方法を知り、そのありように豊かな思いを馳せることが、これから生徒たちが自分らしい生き方を探していくうえで大切なことです。人間生活科が行う授業は、生涯続くその営みの土台づくりの場になります。