▶ 校長・理事長メッセージ
菅 香保
中学校 校長
自由の森学園は、子どもが幸せに豊かに生きていくための知恵を育む場として、日常を丁寧につくる学校です。みなさんがこれまでの日々で培ってきた経験を土台に、教師から差し出される学問や芸術・表現などの未知な世界に出逢い、自分の世界を広げていくことを大切にしています。
中学生という時代は第二次性徴の発現によって、心と体のバランスが崩れる時期です。 大人の体に変化していく中では、嬉しさよりも恥ずかしさや違和感を感じることもあると思います。この変化に心がついていかない、または不安になることもあるでしょう。変化することは未知なことですから当然のことです。この不安感から、殻に閉じこもったり自分の考えを話すことを恐れたり、容姿を必要以上に気にしたりと、大人から見たら小さな悩みでも、子どもにとっては重大なことである場合もあります。
この殻を破る時の支えは、沢山の“知る”に出逢うこと。学校にいくのは何故? と疑問に思ったことはありませんか。この疑問に対して私たちは「自分と出逢うため」と答えてきました。学問に出逢い、何となく気になっていたことが明確になり、これまで知らなかったことに出逢うこと。そうする中で、「自分はこう思う」「自分ならこうする」という意思が生まれ『自分』に輪郭ができてきます。
学ぶことは知的で思考的な作業です。自分の奥深いところと向き合いながら、共に学ぶ他者の考えと出逢うことも授業の大切な場面です。多様なものさしを持つ一人ひとりが、それぞれの考えを出し合いながら、より広くより深く思考を廻らせ、個の学びから対話的な授業空間をつくること。仲間と生み出した新しい世界は、より深い感動に繋がるものです。それはまるで、つぼみが膨らみ美しい花が咲いた開放感に似ているかもしれません。
菅間 正道
高等学校 校長
自由の森学園は、子ども・若者たちが市民として育つのに欠かせない「深く、豊かに、ともに学ぶ」ことを追求してきた学校です。一人ひとりの生徒のみなさんには、他者と出会い、交わることで生まれる喜びを、たくさん経験してほしいと思います。
アメリカの発達心理学者・エリクソンは「基本的信頼(basic trust)」の重要性を説きました。幼少期に他者や世界への安心感が生まれれば、自己に対しても自尊感情を育むことができるというものです。これは、アイデンティティーを確立する青年期においても、あるいは生涯を通じても大切な要素とは言えないでしょうか。
自由の森学園にも温かな信頼関係を醸成する、さまざまな時間や場があります。一人ひとりが、自由に感じ、考えたことを交換し、学びあう授業の場。100を超える選択講座やスタディツアーに行事づくり。体験学習や課外活動と、じつに多種多彩です。
安心して発話し、誰かに頼ったり、あるいは自分を受け入れたりといった体験・経験は、学園を巣立った後も一人ひとりを支え、励ますものだと思います。そして「自分の人生は生きるに値する」と信じ、他者とともにより良い世界を切り拓いてもらえるなら、こんなに嬉しいことはありません。
鬼沢 真之
理事長
自由の森学園は必ずしも「自由な」学校ではありません。込められた意味を正確に言うならば、「自由への森」「自由を獲得するための森」「自由への意志を育てる森」と言えます。単に、学校が変わって、束縛から解放されたことだけでは自由にはなれないのです。
私たちを縛り付けているものは、校則やテストだけではありません。自分でも気付かない囚われ、先入観や偏見から自由になることは本質的であり、とても大事なことです。高校で学ぶということは、学問や芸術との出会いによって精神的な自由、心の自由を獲得していくという営みなのだと僕は考えています。
そして今、世界で幅を利かせている「自由」は力の強いものにとっての「自由」であって、多くの人々の「自由」ではないということです。競争に勝ち残れる勝者だけの自由が本当の自由ではありません。僕には国や企業の国際的な競争に学校や教師、保護者までもが飲み込まれているように見えます。自由の森学園は、自由であろうとする、自由を獲得しようとするみんなの森でありたいと思います。