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「自由の森の良くないところが出た」

「僕も合唱は大好きだけど、合唱が高い感染リスクを伴うことを話し合ったその日の放課後です。何のための学習発表会の中止か。卒業式の縮小か。僕たち高校生は重症化するリスクは低い様だけど、誰かに感染させて殺してしまう危険性があるという話もしたはず」と由比さんは指摘します。

「教員を含め、誰もそれを指摘する人がいなかった。僕も止められなかった。それについては、問題だと考えないといけない。率直に言って自由の森の良くないところが出たと思う」。由比さんは、そんな内容をクラスのLINEグループに送り、賛否さまざまな意見と共にグループ外にも拡散。やがてSNSで終わらせる話ではないと、由比さんは新井校長にメールを送ったと言います。

由比さんの指摘を受け、新井校長は「生徒たちの合唱を見ながら止めることのなかった学校側の甘さ」について率直に認めました。その上で由比さんは「自分も合唱はしたいが、高いリスクがあることを考えると気持ちよく歌えない」と話し、新井校長も「恐怖を感じながら歌う人がひとりでもいるのなら、それは自由の森が目指す合唱にはならない」と、卒業式での合唱は最大限の感染回避への配慮の中、最小限に留めて進める方向で検討することを伝えました。

卒業式

多くの意見交換を経て
卒業のカタチが確定

合唱のほかにもうひとつ教員に寄せられた意見がありました。それは、卒業式実行委員会の委員長、柴田真凜さんからのメッセージでした。

「本来、生徒がつくるはずの卒業式を教員がすべてを決めてしまっていないか」

急変の事態に教員の手で収拾をつけるのは、多くの学校では当たり前のことかもしれません。しかし自由の森では、卒業式をはじめとする行事において教員は、本来「何かを聞かれたら答えるくらい」の存在といってもいいくらいの立場。主体として準備を進めていた実行委員会にとっては、ちゃんと介入したいという思いがあるのです。

「縮小した卒業式を、生徒がつくるのか教員がつくるのか曖昧になったまま、時間が過ぎていく。『ひとまず教員で話し合うから待って』と言われ待っていたら、教員が決めごとをつくり始めていた。もともとは生徒がつくっていた卒業式です。状況は理解できるが、できることなら関わらせてほしいという思いを職員会議で伝えました」と柴田さんは話します。

その後、由比さんの指摘や実行委員会の意見も踏まえた上で、高3の学年集会、職員会議が重ねられ、次のように概要が決まりました。

○ 卒業式は1時間。合唱は1曲

○ 中止する学習発表会の代わりに、
    高3の展示発表を卒業式当日に行う

○ 在校生は卒業式実行委員のみ出席

「多くの在校生が出席できないという残念な思いはありましたが、感染症のリスクも理解できるし、意思決定の過程に参加できた。生徒と教員の考えを束ねてひとつの結論をつくれた実感がありました」と話すのは、高2(当時)の実行委員、阿部高秀さん。この話し合いの過程の中で卒業式に興味を持ち、「自分もこの卒業式づくりに関わりたい」と実行委員会に参加する人も増えたといいます。

とはいえ、この決定の翌日、3月3日から5日までは、自粛要請に従い登校することはできません。卒業式前日の3月6日だけで準備をしなければいけませんでした。

卒業式

3月6日。限られた時間の中
準備に奔走した実行委員

出番を迎えることができた
コウノトリ

「会場づくり、リハーサル、照明、音響の合わせまで1日でやらなければいけませんでした。中心メンバーの実行委員だけは、前日に集まって打ち合わせをする許可をもらって、どの係が何をするかを事前にハッキリさせておきました」(実行委員長柴田さん)。

その甲斐あって、6日の会場づくりはいつも以上にスムーズに進んだようです。限られた時間の中でしたが、卒業生の立つステージの両サイドには2羽のコウノトリが並び、入退場の花道の上にはもう1羽のコウノトリが。卒業生が退場する際に、このコウノトリが飛び立つという仕掛けです。

「限られた時間で、みんなとても集中していましたよ。当初考えていた装飾プランをすべて実現することはできなかったけど、いつもより圧倒的に短時間で作業できました」(企画係長渡邉さん)。

卒業式