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岳岱自然観察教育林を歩く。ここには去年まで「400年ブナ」と呼ばれる巨樹が立っていた。倒れてもなお、森の役割として朽ちる様を見せてくれていた。最終日には、「白神山地恩返しプロジェクト」と称し、砂の詰まった土嚢を担ぎ、活動初日に歩いた登山道の補修をする活動を行った。8 学園の立地する飯能市がかつて林業で栄えていたことから、林業を通じて地域や地球環境、森林と人間との関係を考える講座です。 以前は足尾銅山跡地の、自然回復が不可能であるという荒れ地を訪れ、開発と自然の関係について学ぶ契機としていましたが、近年は世界遺産としても有名な白神山地を訪れ、キャンプを張ります。 「それまで、どれも同じ“緑の山”に見えていたものが、林業を学ぶと、人工林と自然林を区別できるようになる。そのうえで、世界的にも貴重な白神の原生林に入ると、体験の重みも違うものになります」と話すのは、10年以上担当教員を担っている鬼沢さん。 スマートフォンの電波が届かないエリアで過ごすことや、キャンプに不慣れな生徒もいるため、キャンプの注意点なども記した旅のしおりは80ページを超えるボリュームとなるとか。 時間をかけて事前学習を重ね現地に赴く旅の中では、生徒たちもさまざまな思いを抱くようです。「事前に調べられることは全部調べたつもりでいたのに、森に入ったら分からないことだらけ。怖い 学園では、体育の授業に日本の踊りを取り入れていますが、そこで主に重視されているのは、身体操作や、音と身体の関わり合いであり、その文化的背景まで学ぶことは行っていません。そこを補うのが、この講座。地域に伝わる踊りや太鼓を通して、文化や歴史と向き合います。 スタディツアーでは、岐阜県の郡上八幡を訪れ、日本三大盆踊りのひとつとされる「郡上おどり」に参加します。「郡上おどりは、“見る踊り”ではなく、“踊る踊り”だと言われます。8月の間は、毎日どこかで盆踊りが行われていて、誰でも一緒に踊ることができます。約400年の歴史があるとされますが、これだけの長い歴史を持つ盆踊りは他にありません」と、担当である体育科の横手さんは話します。 踊りの振り付けは、横手さんが「5分で覚えられる」と言うほどシンプル。ただ、実際に現地の人の踊りを見ると「想像以上に自分たちが練習してきたものと違い、無駄がない。余計な力みやオーバーくらいだった」とは、参加した生徒の感想。「生きているものは全力で生きようとしていて、死んでいるものはちゃんと死んでいる。そして、その倒れた木の上にはもう新しい生命が生まれている。森が循環していることが感じられました」と、語る生徒も。 植物に興味のある生徒、昆虫に注目する生徒、あるいは林業という人の営みについて知りたい生徒など。興味が向く先はそれぞれですが、同じ場所で4泊5日という時間を過ごすことでお互いに影響しあい、化学反応を生み出すきっかけになっています。 「荘厳で美しくて、これは自分の後の世代にも絶対に残さないと! と強く思った。魅力を知ったからこそ、守りたくなるし、人に伝えたくもなる。本物を知らなければ、人に伝えることもできない」(生徒の感想より)。 このスタディツアーをきっかけに、農業大学や林学部への進学を決める生徒も数多くいるほど。それほど影響を与える体験を得る時間なのでしょう。な動きがなく、まさにシンプルイズベスト」(生徒の感想より)と、見た目以上に奥深さがあるようです。「何となく踊っていると、いつの間にか動きが身体に入っていて、踊るほどに力が抜けていく」という感想もありました。 現地では踊りの最中に審査員が見ており、上手く踊れた人には免状が渡されます。今回のツアー参加者でも、何名かが免状をもらいました。ただ、郡上おどりには10種類の演目があります。その年にもらえる免状は1演目のみ。コンプリートしたくて、毎年通う人も少なくないとか。 2泊3日という短い日程ですが、歴史ある芸能に触れたことで生徒たちの踊りにも変化があったとか。「授業では宮城の岩崎鬼剣舞という踊りに取り組んでいるのですが、郡上おどりを体験してきた生徒たちは、剣舞も踊りが変わった。ただ力強く、格好良く決めて踊るだけではない、連綿と受け継がれる芸能の重みというものを感じとってきたのだと思います」(横手さん)。森林の力を実感する『林業講座』お祭りに参加して一緒に踊る『日本の芸能』

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