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「ウポポイ」にて。アイヌ出身のスタッフの方に「模様にはどんな意味がありますか?」「日常の中でアイヌの精神を意識することはありますか?」など、質問を投げかける生徒たち。下川町にて、60年をサイクルに森林資源を活かした町づくりを行う現場を視察。作業には最新の機械が導入されており、働きやすい環境が整えられている。視察後、「ぜひここで働きたい」という生徒も。10 さまざまな視点で「環境」に触れるべく、3つの地域に足を運んだ環境学講座。1つ目は原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定に名乗りをあげた寿すっつ都町。2つ目は、森林資源を活かした木質バイオマス利用を進める下川町。3つ目は、自然と共生するアイヌの文化を学ぶため、北海道白老町のウポポイ(「民族共生象徴空間」の愛称。国立アイヌ民族博物館、国立民族共生公園、慰霊施設などがある)を訪れました。 「世界的に課題となっているエネルギーシフトについて考えるのがテーマです。普通に生活していては見えない“コンセントの向こう側”を可視化したいと思いました」と話すのは、担当で社会科の猩しょう々じょうさん。 寿都町では、最終処分地になることに反対する住民の方に話を聞いたほか、北海道大学名誉教授の小野有五さんに、科学者の視点から放射性廃棄物の処分方法などについても伺いました。 ここまでに紹介してきた各講座の報告を見ると、学年で活動する修学旅行と比較しても、スタディツアーは本来の意味での「学びを修める旅行」といえる姿に近づいているのではないでしょうか。 一人ひとりが 「感じたこと」「考えたこと」を、何よりも大切にする自由の森学園において、通年で授業がある選択講座とセットになった「スタディツアー」という教育旅行の形は、親和性が高いのでしょう。 また、学年をまたいで開講している講座は、翌年に同じツアーをおかわりすることができるのもポイントです。「前年に経験を通して生まれた疑問を、再確認するために次年度も同じ講座を履修する」という学び方は、自由の森学園ではよくある学び方のひとつです。 期末にある学習発表会で、同じツアーに参加していた生徒の発表を見て「俺が見落としていたことがたくさんあったと痛感した。来年も行って確かめてきたい」と、仲間の事後学習に触発されることも。 ツアー内容も、少しずつ変化していくので、新たな発見のきっかけにもなるでしょう。 まだまだ発展段階にある、スタディツアー。現時点では、理科、社会系の講座が多いですが、他の教科からも続々と新しいツアーが生まれることが期待されています。 また、学園でもバイオマスボイラーなどを取り入れていることもあり、自治体レベルでバイオマス発電が行われている下川町に興味を持つ生徒も多かったようです。 原発という大規模な発電システムが、地域に分断を持ち込むことを指摘する生徒、アイヌの生活文化に今の時代に求められる要素を見出す声など、生徒からもさまざまな感想があがりました。3泊4日で3か所を回る中身の濃い旅でしたが、エネルギーシフトという軸があったことで、生徒の中でも結びつくものがあったようです。 「事後学習では、現地で見て、考えたことをもとに自分たちがこれから何を提案できるかを重視しています。環境問題についての提案は、つい“心がけ”の話になってしまいがちですが、できるだけ自分たちの社会や文化を変えていくアクションにつなげられればと考えています」(猩々さん)エネルギー問題を多角的に捉える『環境学』「スタディツアー」のこれから

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