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※2 地下水バイパス地下水が敷地内に流れ込むことによる、汚染水の増加を抑えるために設置された、地下水の通り道のこと。福島第一原発の西側、山側の離れた場所に井戸を設置して地下水を汲み上げ、排水基準を満たしているか確認後、敷地を迂回して海洋へ排水している。※3 サブドレンサブ(補助的な)ドレン(排水口)の意。地下水バイパスが山側の離れた場所にあるのに対して、サブドレンは、汚染源である原子炉近くに設置された井戸。汲み上げた地下水に浄化処理を行ったうえで海洋へ排水することで、原子炉建屋などに近づく地下水を減少させる。立山 遼さん〈24期生〉1992年埼玉県生まれ。自由の森学園高等学校卒業後、早稲田大学法学部を経て日本放送協会にディレクターとして入職。福島放送局での5年間の勤務を経て、現在は東京のNHK報道局所属。朝の報道番組「おはよう日本」などを担当。6前提で、流れ込む水を減らすことには協力してきた。それを崩されたことに対して「この10年何をやっていたんだ」という話になっているわけです。 福島の漁業者はトリチウムがセシウムと違って人体への影響が少ないとは理解していますが、他の地域の消費者も理解しているとは限らない。無理解でなくても、処理水に触れたかもしれない魚と、そうではない魚のどっちを選ぶかとなれば、あれこれ考えなくても済む後者を選ぶのは、ある意味で仕方がないとも言えます。 そうなると、回復してきているとはいえ、出荷量が震災前の2割程度になっている福島の漁業にとっては、致命的になりかねません。出荷量が減っているのも、魚が減っているからではなく、漁業ができない期間に仲買人がいなくなってしまったり、置いてくれるお店の棚が、他の地域の魚に入れ替わってしまったなど販路の問題ですから。 もうひとつ、以前から地下水バイパス(※2)やサブドレン(※3)などの水は、海洋放出されてきました。その際も漁業者が交渉した結果、流されることになりましたが、地元からは「漁業者が認めたから放出されてしまった」という批判もあった。今回も同じことになるのは避けたいという思いが漁業者にはあるのです。 海洋放出するにしても、その判断や責任を押し付けてくれるなということですね。漁連の会長が「国民的理解を」と発言しているのには、こうした背景がありますが、なかなかそこまで理解できる報道はありません。 現在は東京の放送センター勤務になっていますが、原発関連の報道の格差も肌で感じています。福島では、原発がどういう状況かというニュースが流れない日はありませんが、東京ではもうニュースになる日の方が少ない。多くの人が興味を持っていないからニュースでも取り上げない、そして関心を持つ人がさらに減るというループです。毎年、3月のタイミングでは震災関連の話題を取り上げる番組が増えるので、今は、そのタイミングでどういう伝え方ができるかを考えています。 福島にいるときは、「なんで3月にしか取り上げないのか?」と思っていたんですけどね。認めることから分断が始まるジレンマ

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