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教員の働きかけでできなかったことが、子どもたちの関わりの中でできるようになっていく子どもたち自身が持っている問題意識から学習の場をつくる試み1313ループワークの時間をすべての授業に必ず入れるようにするなど、学校全体の取り組みをスタートしました。そうすると、子どもたちは知識だけでなく学び方も共有していくんです。体育の感想を「今日も卓球をした。暑くて疲れた」とか1行しか書けなかった子が、他の生徒に触発されてやがて 2 行 3 行と言葉を紡ぐようになる。 僕たちは、それを「3 行革命」って呼んでいたの。教員の働きかけでできなかったことが、子どもたちの関わりによってできるようになっていく。そういう手応えがありましたね。学びあいが深まると、子どもたち同士も生徒教員間も関係が穏やかになり、教員が大声を出すこともなくなりました。 小鴨:公開授業を見ていても「学びあう」ことを常に意識した授業の中で、どんな子も取りこぼさないという態度を教員が示し続けていると感じました。その覚悟を持って子どもたちを受け入れていますよね。淺川:授業に来ない子に対しても、参加への道筋にあると考えていますよね。「無視する参加」「拒否する参加」「教室にいるだけの参加 」「話は聞いてい※1 GIGAスクール構想2019年に文部科学省が発表した教育改革案。児童・生徒1人に1台のコンピュータと高速ネットワークを整備し、個別最適化された教育ICT環境の実現を謳う。GIGAとはGlobal and Innovation Gateway for Allの略。※2 学びの共同体全員が黒板に向かう一斉授業ではなく、コの字型の席配列やグループワークなどによる学びあいで課題に取り組む。教育学者の佐藤学・学習院大特任教授(東京大名誉教授)が1992年に提唱。アクティブラーニングの先駆けとされる。るらしい参加 」……。 その先に、「書いてみる参加」とか「発言してみる参加」があって、それぞれの段階をちゃんと認めて歩みを見守るまなざしがある。ところが一般的な学校は、元気なのに授業に出ない子とか、教員になにかとちゃちゃを入れる子は、なるべくなら排除したい。ものいう保護者に対してもレッテルを貼ってなるべく近づかないようにするとかね。それだけ教員が一杯いっぱいで余裕がないのかもしれない。 小鴨:今後、自由の森の教育の中で注目したいのは、授業の中で生徒同士がケアしあう姿です。理解が早い子もそうでない子も一緒に学びにコミットしている姿です。同じ集団の中でどの子も学べることが本来の個別最適化だと思うんです。学力差を埋めるという難しい課題を、生徒たち自身が持っている力で改善できるんじゃないか。今日の研究会でその可能性を感じました。淺川:子どもたちの様子を丁寧に見ていると、発言がない生徒も気づきをノー トに書いていたり、つぶやきはあるんですよね。それをすくいあげて共有する場面が、自由の森の授業にはもっと欲しい。各教科とも教材論はしっかり継承されているので、発問の角度を変えてみたり協働の場面設定を工夫したりの授業方法論というのかな、そこを重点的に研究したらどうかと思います。もうひとつは中高一貫校の公開研だから、各教科とも中学と高校両方の授業が見られるようにして、「あの子たちがこんなふうに成長するのか」って具体的なイメージを 醸成できたらいいな。 片岡:子どもたち自身が持っている課題や問題意識をもとに、子どもたち主体で学習の場をつくっていく新しいチャレンジがもっと出てきたら面白いですね。テーマ別分科会では、教員が担当教科を超えて、子どもたちが学びたがっているテーマを自分も学びながらサポートしているんだと思う。そういう教科の枠を取っ払ったり、教科横断的な学びの展開もどんどん見せてほしいですね。子どもたち自身が課題をのりこえる学びへ

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