morinoat_40
11/16

高校1年生が立ち上げたテーマ別分科会「心の健康について考えよう」。「一人ひとり感じることも感じ方も違う、という日常の中の経験から、心についていろいろな人と考えてみたかった」と語る。11淺川:とくに進学校出身の学生はそうですね。片岡:学力に自信のない層は、なおさら語りあいの場から疎外されています。本人たちも「どうせバカにされるだろう」と、はなから諦めています。その結果、積極的な発言者から離れていったり、卑近な会話でしかコミュニケーションができなくなっていきます。発言を妨げられたり、笑われたりせずに真摯に語りあう経験は、人間の成長にとって本当に大事なことです。淺川:もうひとつ、一般的な教育研究会と異なる点として保護者や卒業生や一般の参加者も議論に巻き込んでいますよね。世代もバックボーンも異なる人たちの意見を聴きあい、語りあうから、より議論が深まっています。小鴨:教員にとっても立場の異なる人と話すことで自分の視野、価値観が広がるのではないでしょうか。私は、家庭訪問や個人面談をやる前は少し憂鬱なんですけど、実際に話すと各家庭の背景が見えてきて子どもの解像度が高くなりますし、保護者の意見も理解しやすくなりますよね。片岡:保護者も「私が高校生のときはこうだった」とか、自分が受けた教育をベースに考えがちで、そこから離れた子どもの姿をなかなか受け入れられないことが多いのですが、今日みたいな場で多様な生徒、先生、保護者を見ていると、違った視点を得られると思います。ネガティブに捉えていたことのポジティブな面を見出せたりするんじゃないかな。公開研が教育観や子ども観を更新する機会になりえると思います。淺川:「異なる視点」といえば、東大附属の公開研で、体育科の研究協力者にまったく専門外の「運動がずっと苦手淺川 俊彦さんAsakawa Toshihiko東京大学教育学部附属中等教育学校を2022年3月に退職。その後、東京大学教育学部のスタッフとして高大接続を担当。元・自由の森学園体育科教員。 多様な意見が教育観や子ども観を更新する

元のページ  ../index.html#11

このブックを見る