morinoat_39
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99東洋大学ライフデザイン学部健康スポーツ学科を卒業後、新卒で本学体育科に入職。今年で4年目。幼稚園の頃から剣道に親しみ、現在は所属道場での指導も行っている。るとその走り方を見失ってしまう生徒もいます。それがダメってことじゃなくて、ちょっと面白いですよね。そこから改めて他者を思いやりながら走ることを味わい、もう一度自分の身体に戻って来るものがある。いろいろな形で、自分の走りを深めていければと考えています」(宇都宮さん)。 和太鼓や鬼剣舞などの伝統芸能に取り組むところも、学園の体育の特徴と言えるかもしれません。楽しみにしている生徒も多いそうです。 伝統芸能へのアプローチは、創立当時から体育の授業に採り入れられており、もともとは「日本の子どもに日本の踊りを」という思いがベースにあったとか。今は、多様なルーツを持つ生徒たちがいますから、ちょっとニュアンスは変わってきて、スポーツ文化の中で見落とされがちな感覚やリズムなどに目を向ける、という視点もあるそうです。 そして何よりも、踊りや太鼓を通して生徒たちが身体を動かすことを伸び伸びと楽しむようになり、身体が開放的になっていくのが見えるといいます。 また、多くの生徒にとって初めて出会うものなので、スタート地点が一緒という利点もあります。ただし、この点は教員にとっても同じ。大学などで学んだスポーツ的な身体の使い方とはまったく異なる動きに戸惑う教員も少なくない様子。高橋さんも、「踊り」「太鼓」におののいたひとりだったと語ってくれました。「私は、そもそもダンスが苦手だったので、踊りと聞いたときは、もう『マジか』と。ただ、苦手としていたいわゆるヒップホップ系のダンスとはまったく違う動きだったので、いざ取り組んでみると心地好く感じました。自分の知らなかった世界に触れられた喜びというか、新しい身体の使い方に出会えたうれしさがありましたね」。 踊りや太鼓の中に、他の運動とリンクする点がある、と語るのは宇都宮さんと岩下さん。「初めて踊った時、自分が今までやってきたサッカーなどとは異なる、柔らかさやしなやかさがあって新鮮でした。しかも、そこで掴んだ身体感覚には、サッカーにフィードバックできる部分があるんです。生徒が書いた感想の中にも、『ほかのスポーツに活かせそう』という声が、いくつもありました」(宇都宮さん)。 「太鼓は小さな力を、いかに伝えて大きな音を出すかという点が、大学でやっていた少林寺拳法と共通していて興味深く感じています。重心を意識するという点は、走ることにも共通することですし、日常の歩く動作などにもつながっている。そういうことへの気付きが自分の中にも増えてきたので、それをもっと生徒たちと共有できればと考えています」(岩下さん)。 そのほかにも、「やり投げ」や「円盤投げ」といった中学・高校の体育としては珍しい教材もあります。これは、物に対していかに働きかけるかという視点から、自分の身体に向き合うというもの。 一方で、バレーボールにも取り組みます。体育の授業ではよく目にする種目ですが、得点を争うことを主軸には置いていないとのこと。ボールにのせたメッセージを丁寧に相手に受け渡すことを重視している点が特徴だと、宇都宮さんは言います。「バレーボールは、他者とボールをつなぐコミュニケーションが成立しないと得点できないという競技特性から、教材として取り入れるようになったと聞いています。実際に受け手を思いやってボールを上げないとつながらないので、どうやって受け取りやすいボール伸び伸びと動くことを楽しむ中で、身体の新たな可能性に気づく和太鼓や踊りなどの伝統芸能に取り組む理由高橋 郁光Takahashi Ikumi他種目にリンクする動きも他者とつながるチームスポーツも宇都宮 和音Utsunomiya Kazune東洋大学ライフデザイン学部健康スポーツ学科を卒業後、複数の学校で体育教員を務めた後、本学園体育科に入職。現在3年目。小学校の頃からサッカー、水泳、剣道などをに取り組む。

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