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 食堂で働くようになってから、この時期の艶っぽい赤い色が、秋を知らせる定番カラーになりました。紅玉りんごといえば、タルトタタンにアップルパイ、焼きりんごと、食べ方はいろいろとありますが、食堂ではジャム一筋でやらせてもらっています。 10月中旬、青森の田村農園から70kgの紅玉りんごが届きました。約1年分、寮生のためのジャム作りが始まりました。手間がかかるものほど、生徒から人気なのは、手しごとの温かさが食べ物にのりうつっているからなのでしょうか。  これまでも食堂の「おいしさ」のヒミツについて書いてきましたが、自然環境においても人の食べるという営みにおいても「次の世代に受け渡していける食の形」と、まいにちの「手作りのごはん」の後ろには、それっている気がします。そんならしい「味」がちゃんと遺食と出会える場所がオーガニックレストランとしてあるのではなく、学校が営む「学食として在る」こと、教育と食が同一線上に在ることの意味を考えさせられるばかりです。 あるコラムで、「おいしい米を作るため、ではない。のこいい土のためにできることをする」という農家の方の言葉を見たとき、食堂と同じだなあ、と思いました。多くの方の想いや手間や未来に向けた「いま」が、この学校の学食作りの本質であり根幹なのだと改めて感じた瞬間だったからです。 食堂で38年間繰り返されてきた食事作りや、食堂を支えてきた方が残してくれた言葉、生徒の感性や保護者の方や食堂で働く方たちから学ぶことはとても大きいです。 その時期にしか採れない旬の食材を、いろいろな形で加工し、季節の味を日々の中で楽しんでもらうこと。り続けていくという食べものの不思議。小さな味は遺楽しみをちりばめることが、食堂ではずっと大切にされてきたのだと感じます。このひと手間が、一食にもたらす効果は絶大なのです。 トントントンっと食堂に響くりんごを切る音。甘くて酸っぱいりんごの煮える香り。ルビーの如く透き通るように赤く輝くりんごジャム。さあ、2022年の秋も、食堂を甘酸っぱい香りでいっぱいにしちゃいますよ。のこ最初から、こんなきれいな色をしているわけではなく、1時間コトコト煮ているうちに、りんご全体が “紅”に染まっていくのです。煮ないと見ることのできない“紅玉”りんごが秘めている、美しい色です。14紅玉りんごのジャム作り渡邉さやか(自由の森学園 食生活部)

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