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梶原阿貴 さん652020年冬、ホームレスの女性が襲われた事件をもとに、「社会的孤立」をテーマにした作品。多くの人が現実に直面している、非正規雇用や年齢による不安定な就労状況の実態や、そこに追い討ちをかけたコロナ禍における困難な実情。いびつな現代日本で生きる人々の心に去来する葛藤が、全編にわたり描かれている。監督:高橋伴明 脚本:梶原阿貴出演:板谷由夏/大西礼芳/三浦貴大/松浦祐也/ルビーモレノ/片岡礼子/土居志央梨   /柄本佑/筒井真理子/あめくみちこ/下元史朗/根岸季衣/柄本明 ほか夜明けまでバス停でもりのあとを歩くKajiwara Aki5期生  映画の脚本家をしています。最近2本の作品が封切りされました。『夜明けまでバス停で』では、描かれることが少ない中年の女性を。『空のない世界から』では、DVを受けているシングルマザーと無戸籍の子どもを描きました。 『夜明けまでバス停で』は、コロナ禍に渋谷区幡ヶ谷のバス停で起こった悲惨な事件をもとにした作品です。2020年の東京の景色も多く取り入れ、記録映画としても観てもらえるようにと考えました。住まいからほど近いところで起こった事件だったのもあって、自分にできることはなにかと考え、事件が風化する前になんとしてでも映画をつくらないと、という気持ちでした。 以前は、俳優をしていた時期もありました。自由の森学園に在校していた高1の頃に映画『櫻の園』でデビューして、その後10代、20代の頃は女子高生や看護師、OL、CAなどといった役をやることが多かったですね。 ところが、30代になると仕事が激減。割とずっと忙しくしてきたのに「なんでだろう?」と思いましたが、改めて考えてみると、単純に30代以上の女性って、映画の中にあまり登場しないんです。「男性がたくさん出てきて、女性はオマケ」みたいな作品は、いっぱいありますよね。極端な例を挙げれば、時代劇とか半沢直樹なんてそうです。若い女性は大量に消費されていくのに、中高年の女性という役は、需要が急に少なくなるんですよ。11表現の手段をもつ私がつくるべきもの書く側から今の映画界が抱えている状況を変えていきたい女性を「オマケ」にしない

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