morinoat_38
10/16

菅> 私は、自分の子どもが生まれて、育休から復帰するときに、「自分の子ができたことで、生徒たちがかわいく思えなくなっていたらどうしよう……」と、ちょっと怖かったんですよね。でも、復帰してみたら中学生から高校生まで、皆んな自分の子どもみたいで、前よりさらにかわいく思えてきちゃった。菅> なので、それは結局「生徒を一番大事にしている」ということなのでは? と。じゃあ、だいたい同じだなってなりましたね。菅> 体育を例に挙げると、中学の授業をやっている隣で高校の授業をやっていたら、高校生にお手本を見せてもらうようなことがあります。「ねー、ちょっとこれ、みんなにお手本見せてもらっていいかなー?」って、声かけて。「いいよー」って。そういう、ふつうに横にいる関係ですね。今後の構想のひとつとして、中学の森の時間(※2)で行われている林業の授業に、高校生に教えに来てもらうことも考えています。そうやって高校生の姿を目の前で見ることは、中学生にとって、自分の将来像を思い描くことにつながっているのではないかと思っているんです。 菅> そう、それを聞いたときに「えー!? ただの仕事なの?」って、大声で言っちゃいましたよね。でも菅間さんは、周囲が心配になるくらい仕事をとても大事にしていますから。※2森の時間:「ESD=持続可能な世界を実現する意識を育む」をキーワードに、さまざまなテーマに取り組む、カリキュラム上の「総合的学習の時間」の名称。撮影協力:やまや菅間> 体育祭や学園祭などの行事を一緒にやっていると、中学生は高校生のお兄さんお姉さんに憧れを持ちますよね。生徒同士は自然に交流しています。この学校では年齢が違っても、お互いに名前で呼び合うような、いわゆる先輩・後輩とは違ったかたちの関係ができている。教員の立場としては、中高一貫で子ども像を共有できているというか、6年間を通して生徒を見られるというのは大きいですね。馴染めない生徒が、中学時代の担任に相談したりということもありますし、中学のときに担任をしていた子たちは高校でどうしているかな? と自然に目が行きますね。10菅間> 中学は、高校の準備段階じゃないし、高校は中学と大学の間に挟まれている踊り場でもない。成長の段階によって、同じ学校でも見え方が変わってきますし、中学から高校に内部進学する生徒には、「中学の3年間で、この学校のことを分かったつもりにならない方がいいよ」ということも伝えています。菅間> その引き受け方もすごいですよね。母性スゴいな! と。私は、教員は仕事だと思っているので、そこまでの受け止め方はできないなーって話しました。菅間> 完全にワーカホリックなんですよね。自分でもそう思っています。菅間> この学校の教育理念と実践は、日本の教育の在り方にオルタナティブな可能性を提示するという意義があると思っています。学外の研究会などにも参加していますが、決して番外地ということではないと思っています。こういう学校があることで多様な教育の可能性を示すことができる。それは、この社会にとっても有益なことだと思っているので、自由の森だけ、小岩井の上だけが青空ならいいとは思っていないんです。今日はありがとうございました。自由の森の上だけが青空ならいいとは思っていないんです(菅間)

元のページ  ../index.html#10

このブックを見る