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新井 智恵さん〈24期生〉1992年埼玉県生まれ。自由の森学園高等学校を卒業後、山梨大学医学部看護学科に進学。看護師、助産師、保健師の国家試験に合格し、卒業後は助産師として岐阜県の長良医療センター勤務。その後、宮城県の坂総合病院で助産師として3年間勤める。コロナ禍では、さいたま市の保健所での電話対応も経験。また、自由の森学園で中学2年生を対象に、全5回の性教育の講座も担当した。この春から、再び助産師として活動予定。勉強をしているから」と、姉が病院に掛け合ってくれたんです。 緊張しながら分娩室に入って、助産師さんと同じ場所に立ち、初めて向き合ったお産は衝撃的でしたね。生命の誕生の瞬間だし、姉はいつもの姉じゃなくなっているし、私もなんだかもう、いろいろ大変なことになっていました。たということも。 本来私は、のんびりしているタイプで、小さい頃から「制限時間内に文章を書きなさい」というのも苦手でしたし、大学も、少し時間が欲しくなって途中で休学しています。向き合いたいものに、ちゃんと向き合うためには時間が必要なんですよね。 そんな私が、こんな1秒1秒で判断を迫られるような仕事をしているというのは、不思議です。相手の気持ちにアンテナを張って、耳を傾けて、寄り添い、私は何をしてあげられるか、するべきかと判断する時には、追い立てられても大丈夫でした。 「一人ひとりのお母さんと、生まれてくる赤ちゃんにとって最良な選択は何か」。そのことはなぜかずっと考えていられます。 数年前から、中学校などから性教育の授業を依頼されることが増えました。自由の森でも、昨年授業を担当させてもらいました。私は、言いづらいことも含めてきちんと伝える授業をする方ですが、みんなとても真剣に参加してくれましたね。 日本における性教育は、世界的に見て20年遅れていると言われています。その理由はさまざまありますが、性教育が語るのは、性そのものについてだけではありません。友だちやパートナーなど大切な人との関係をどのように築いていくのかという、生き方に密接に関わる内容です。 「性」に対する基本的な眼差しをつくることは、どのように自分を大切に、また相手も大切にして生きていくのか、考えていく上で、とても大切なことだと思っています。 5年間の助産師としての病院勤務を経て、最近まで埼玉の保健所に勤めていましたが、また近々助産師に復帰しようと考えています。 医療業界でも、社会のさまざまな場所と同様に、AIの利用が検討され始めているようです。多くの情報からベストな選択を迫られる産科にとっても、それはもしかしたら追い風なのかもしれませんが、今の時点で私自身が直感的に思うこととしては、「AI出産」、ちょっとイヤかも……。55お母さんと、生まれてくる赤ちゃんにとって最良な選択はなにか。そのことはなぜかずっと考えていられますベストなお産を「つくる」 大学卒業後は、岐阜県の病院でNICU(新生児集中治療室)や産科・小児科病棟で助産師として所属したのち、宮城県にある「坂総合病院」で、助産師として3年間勤務しました。 医療的な判断が必要な時は医師が関わりますが、正常なお産なら、助産師だけで赤ちゃんを取り上げられます。助産師はお母さんと相談して、ベストなお産を「つくって」いくことが仕事です。 お産といっても人それぞれ。正解がない、命の現場です。常に「何が適切か」という判断を、瞬間的に繰り返さなければいけません。現場では、思いもかけないことがたくさん起きます。腹痛を訴えて来院した方が、自身でも妊娠に気づいておらず、実は出産寸前だっ20年遅れている性教育

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