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解き方は自由。人の数だけ解き方があっていい。 数学科教員の福島絵里子さんも「教員の冬休みの宿題みたいなものですね」と、入念に入試問題に取り組む姿勢に同意します。 「自由の森では、算数や数学が何かの道具になっていることを扱う時間がたくさんあり、身近な量(重さ、長さ、高さ、温度など)を対象にして説明することを大切にしています。子どもがつまずきがちな分数も、量で説明したほうがくっきりするんです。たとえば“4人分のレシピをもとに、3人分の料理を作るには?”とか、生活に即して考えます」。 小学校によっては分数の横線を定規で引かないと減点したり、かけ算の順序が違うと×をつけるといった指導もあるようですが、ここでの解き方は各自の自由。このレシピでいえば「×3/4」でも「÷4×3」でもかまいません。 「入試体験会でよく保護者の方に確認されますが、答案が汚れてもいいので、式などは消さずに残しておいてねと伝えています。一人ひとりがどう考えたのか、その道のりに触れたいのです。正解主義や最短主義よりも、あなたの通った道には意味があるよというメッセージを入試でも伝えていきたいですね」。 中学入試に用意する、環境問題に特化した適性検査型入試「X入試」は、特に独特なスタイルかもしれません。「適性検査型入試」とは、文章や図、グラフを読み取り、自分の考えを文章でまとめる受験形式のこと。算数、理科、社会などを横断的に扱うものです。 「自由の森では、総合的な学習の時間を『森の時間』と呼んで、地域の文化や歴史、産業の成り立ちに出会える授業を展開しています。 この授業をもとに、始めたのがX入試です。2015年からスタートしているのですが、それはSDGsが国連総会で採択された年でもあります」と語るのは、数学科教員で中学校長の中野裕さん。「自由の森では授業を組み立てるのと同じように、世の中の仕組みに気がつくような内容を心がけています。テーマは作問チームがそのとき興味を持っていること。たとえばある年は『地産地消』で、フードマイレージやオフグリッドハウスなどを紹介しました」。 模範解答が存在しないことから、子どもの自由な発想に教員がハッとすることも。「採点している教員から『すごい!』と歓声があがったりします。大人の想像力を超える解答に出会えることは、私たち教員にとっての喜びでもありますね」。 「授業入試」は理科、社会科、保健体育科、美術科から任意の授業を選択して、授業を受けてもらいます。表現系の科目も含めることで、表現活動を得意とする子どもたちと出会う機会にもなります(本来、音楽科も選択肢にありましたがコロナ禍で休止中)。 「この学園の特色は、校則がないことなんかよりも、子どもが主体となる学び=授業というところなんです。入試は、学園が最も大切にしている『授業』の延長にあるものと考えて取り入れています。それは『こういう学びをしたい学校なんだ。君はどう思うかな?』という学校からの問いかけでもあります」と前出の新井さん。自由な発想に教員が「ハッ」とすることもありますよ。99正解主義や最短主義よりも、「あなたの通った道には意味があるよ」と伝えることができる授業に、入試にしていきたい森の時間を適性検査型入試に【X入試】自由の森を体感する【授業入試】

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