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 学園が、初めて入試を実施したのは1985年。日本各地で、校内暴力が社会問題となっていた頃です。そんな中、点数序列主義や管理主義を批判し、人間の自立と自由への追求を掲げた学園には全国から志願者が殺到し、入試倍率は4倍を超えたといいます。  その初めての入学試験をどのように実施するのか——。 点数序列を批判して注目を集めていた学園が、どんな入学試験をするのか「お手並み拝見といこうか」という世間の視線もあったでしょう。当然、学園関係者はこの問題を前に、頭を悩ませていました。 「志望者全員を受け入れたい」。そんな想いを抱えながらも、定員のために選抜をせざるをえない矛盾と葛藤を抱え、教育研究協力者の大学教授や教育評論家らの知見も借りて、議論を重ねたといいます。 その結果、一定の枠による「狭き門」を設定するのではなく、4つの門を設ける方法が考案されました。①筆記試験コツコツと学力を養ってきた子どもが力を発揮できるように。②授業入試自由の森の授業を体験。意見の交換や課題に取り組みます。③表現活動開校当時は音楽、絵画、ダンス、歌唱、書道など自由なスタイルで自分を表現しました。④面接受験生と対話しながら、志望理由や学びのイメージを確認する場として。複数の観点で子どもを見つめることを大切に。 開校時から入試に携わってきた、前高校校長で理事の新井達也さんはこう振り返ります。 「もちろん今もですが、当時から複数の観点で子どもを見つめることを心がけました。たとえ筆記試験が芳しくなくても、表現活動などで輝くところがあれば良いじゃないか、と。当時の入試は2日間。さまざまな角度で見つめ、見つめられる濃い2日間を過ごしました。教員たちにとっても、多様な生徒たちと一緒に学びをつくっていく学校なんだ、ということを確認する意味もあったと思いますね」。 この4つの観点は、現在の入試にもアレンジして引き継がれています。たとえば国語は記述問題が中心です。 「読むこと、書くことを大事にしているので、なるべく一人ひとりのまなざしが表れる作問を用意します」と語るのは、日本語科教員の山口大貴さん。 「目の前の文章と向き合おうとする姿勢は、記述から伝わってくるもの。それは書き方の上手下手ではなくて、自分の考えをつかもうとしている、あるいは伝えようとしているという意志が感じられるかどうか。他者と真摯に向き合う人に出会える試験でありたいと思います」。 そのために、自分自身や学びをとらえなおせるような、発見のある文章を国語科の教員全員で探しているとか。「適度なボリュームで試験問題にふさわしい品格を備えた文章はなかなかなくて、題材探しだけで数週間はかかりますね。候補が見つかってからも作問についてアイデアを出しあい、試案を作って難易度をチェックします。実際に解いてみて懸念事項があれば初めからやり直すこともありますよ」。言葉の中には、一人ひとりのまなざしが表れるものです。8さまざまな個性を見つめる【4つの門】思考のプロセスを見守る【筆記試験】

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