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野いちごやニラ、クレソン、シソ、ミョウガ、ムカゴなど、犬の散歩中に、食べられる野草を見つけて採集するのが日課とか。どこに自生しているか覚えて、季節の味覚を楽しもうといつも目を光らせているという。SDGsブーム以降、量り売りがトレンドの様に取り上げられることがあるが、飯能駅近くにある老舗米穀店「米由商店」では、豆は100年前から量り売り。容器を持参すればゴミが出ないし、必要な分だけ買えるのでムダがない。と思っていたら、持病の腰痛が悪化し、想像よりも前にお店は強制終了になってしまいました。 その頃、ひょんなことから出会ったのが、今も私の暮らしの基本になっている『パーマカルチャー』という生き方です。パーマネント(永続性)、アグリカルチャー(農業)、カルチャー(文化)を組み合わせた考え方で、自然界の仕組みを生活に取り入れ、永続できる農業と文化を大切にする在り方です。 田畑を耕したり、エネルギーを自給したりということもありますが、それだけではなく、毎日の細かいところ一つひとつに対してどう在るかを、自身に問い続けるカルチャーです。「こういう生き方なら、お尻についてくるものがないかも」と腑に落ちて、のめりこみました。 ほどなくして、勉強するだけではなく「実践して学ぶ場を作りたい」と思い立ち始めたのが、宿泊しながらパーマカルチャーを学べる「シンカヌチャービレッジ」という拠点です。シンカヌチャーは、沖縄の言葉で「仲間たち」。「やんばる」と呼ばれる沖縄県北部の自1012然が多く残されているエリアで、夫と一緒にジャングルに戻った土地を開墾して、DIYで家を建てて、畑を耕して。オープンしてからは、パーマカルチャーを学びたい人はもちろん、旅行客の方、沖縄を訪れる修学旅行生まで、たくさんの人が集う場になりました。 この活動は、約6年ほど続けました。意義のある実践の場が育まれていたと思うのですが、経済的にはずっと大変で、気づけば「環境どころか、自分たちの生活が持続可能じゃなくなってきてるじゃないか」と。他にも家庭の事情もあって、2年前にシンカヌチャービレッジは人に譲り、関東に戻ることにしたんです。 沖縄ではガッツリ自給自足を目指していましたが、今はゆるめですね。夫は東京で仕事をしていますし、私は畑づくりや野草を食べるワークショップをやったり、パーマカルチャー講座などにも取り組んでいますが、市内の飲食店でも働いています。 都市部でこそパーマカルチャーの生き方が必要とされる時代でもあり、「アーバンパーマカルチャー」に取り組む人も増えています。 現代的な暮らしの便利さを損なってまで、何かを実践するということではありません。例えば、「何気なく捨てている小麦粉の袋も、ジップロック代わりにリユースできますよ」というと、みんな驚きます。 ジップロックは買って使うものという「当たり前メガネ」を通して見た世界。それを「イヤイヤ、捨てていた小麦粉の袋でも代用できるのでは?」という気づきを持つ「観察メガネ」にかけかえるだけで、新しいものを買う機会を減らせる——。それは世界の見え方が変わるメガネです。 最近、「サスティナブル」というフレーズをよく聞くようになってきました。すでにあるものを工夫して使おうという考え方は、古くから人々がつくり出してきた、もともとある暮らしのカタチです。 多くの人が自然との共存に興味を示すことは喜ばしいことです。でも、天然素材のエコバッグを「新たに」買うことを勧める宣伝や風潮なんかは、本当にエコなのかな、と思ったりもしますけどね。「自然」も「私たち」も続いていくカタチを探る仲間たちとの「場」をつくる畑を耕さなくてもできるパーマネントな暮らし

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