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社会科こが賀古※1 『2100年へのパラダイム・シフト 日本の代表的知性50人が、世界/日本の大変動を見通す』作品社 2017年※2 ドラゴンボールの戦闘力 / 人気アニメ「ドラゴンボール」シリーズに登場する、キャラクターの強さを表す指標となる値。測定には「スカウター」と呼ばれる、架空の単眼式ヘッドマウントディスプレイ装置を用いる。測定時点における値を測ることしかできず、潜在能力などを検出することはできない。後藤教員(以下、後藤):「多様化の時代」と言われていますよね。たまにその多様な意見が正面からぶつかり合わず、接点がないまますれ違っていると感じることがあります。たとえばホームルームや実行委員会。AかBかの二択で枠組みを決めることに重きをおいていることが多いなぁと。どちらかに手を上げてください、で、はい多数決で決まったからもう終わり、と。Aに決まるとBを希望していた人たちは「もういいや」とどこかへ行ってしまう。どうやってAをやるのか、どうやったら面白くなるのかといった、議論を深めるやりとりが減っているように思います。古賀教員(以下、古賀):私は生徒と世代が近いので、ちょっと分かる気がするんですよ。0か100か、枠組みから決めたい気持ちがすごくあるんです。なぜかというと、この社会に見通せないことが多すぎるから。せめて身の回りだけでも見通していきたい。正解が分からない不安の現れかなと思います。今の若い世代って、家庭とか学校とか本来安心できる場所、傷つかなくていい場所で傷ついているんです。だから、これ以上傷つくことを恐れて、しんどいことや面倒なことには関わらない。後藤:それから、これは学校に限りませんが、コミュニケーションって相手あってのものなのに「論破力」のようなイヤな言葉もありますよね。マウントを取る相手を言い負かすのがゴールみたいな。すごく攻撃的で、まるでコミュニケーション能力がドラゴンボールの戦闘力(※2)かなんかみたいになっている。西教授(以下、西):「みんなにとって面白い」とか「みんなにとって意義がある」とか、「みんなにとって」が意識されると議論になります。その次元がないとバラバラになってしまうので。でも議論の前にまず、物事には白か黒かではなくグラデーションがあると受け入れることが大事だと思う。枠組みから決めたい人たちにとっては面倒くさいでしょうけど。7 なつき対話不能な社会がくる?

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