morinoat_35
12/16

用途だけじゃない存在感があるもの、現れる予測できなかった「何か」、介入しすぎずに向き合うando.moyuru安藤萌(もゆる)さん〈21期生〉1989年長野県生まれ。自由の森学園高等学校卒業後、フィンランドのLiminka Art Schoolを経て、Lahti Universityにて家具の設計やプロダクトデザインを学ぶ。在学中には、富山大学への1年間の逆留学も経験。卒業後、飛騨高山の家具メーカーや沖縄の福祉事業所での勤務を経て、2019年、長野県上田市にて「森のうつわ屋」をオープン。現在に至る。森のうつわ屋住所:長野県上田市野倉936営業日:土・日 AM10〜PM4 / 平日は不定休URL:https://www.morino-utsuwaya.com 余談ですが、木が持つそういう性質と向き合える人は、人ともうまく向き合える人が多いと思っています。私がどうかは分かりませんけどね。 自由の森学園でも木工の選択講座を選んでいましたが、ものづくりに本格的に打ち込み始めたのは、高校卒業後。進学した先はフィンランドでした。美術を総合的に学ぶ学校を経て、家具やプロダクトのデザインを学べる美大にも進学しました。 「北欧のものづくり」っていうと、多くの人が穏やかな「もの」のイメージを思い浮かべると思いますが、意外とビジネス的な考え方をしますし、デジタル技術で精密な設計をします。金属やプラスチックだって多用します。 当時、僕は「もっと手を動かして木でものを作りたい」、と思っていたので、木工の技術を習得するために1年間留学しました。留学先は富山大学。留学先からさらに日本に留学する、という1012変なことになりました。 また、フィンランドにいた頃に、ホームステイ先で自閉症を持つ子どもたちと、ものづくりをしたことも大きな経験だったと思います。彼らは天才ですからね。マーケティングや意味、理由なんて考えずに作ることにただ打ち込む彼らと過ごす時間は、今の私にも影響を与えていると思います。 フィンランドでは、説明できる「デザイン」的な思考を学んできましたが、用途だけじゃない存在感があるものや、それを作ることに惹かれ、結局「アート」的な立ち位置でものを作るところに落ち着いてきました。 木と向き合って、ああでもないこうでもない、と形を探っていくと、その先で自分の予想を超える予測できなかった「何か」が現れてくる。人が介入できる範囲は限られています。なんなら作ってる最中からゆがんできますからね。でも、日々この作業を続けていると、どんな木とも向き合える様になる。時間はあまりかけないようにしています。時間をかけすぎると介入しすぎちゃうんです。 大事なのは「どう終わらせるか」。世の中にある器はどんな形で、どんなデザインが良しとされているのか、ネットで検索すればすぐ分かるけど、教科書通りにやっても広がりがありません。終わらせ方に、作り手の「人」が出る。だから面白いと思っています。 最近、スケールが大きければ大きいほど価値があるかの様な風潮がありますよね。「いいね!」がたくさんもらえることがスゴイ、という様な。そんなに誰もが大きなことばかりに気を取られなくても、一人ひとりができることをしていれば世界はまわるはず。 もしかしたら他の人は見向きもしないかもしれない。でも「自分はコレ」。それでもいいのではないでしょうか。北欧のものづくり そこに決して予想の向こうにある姿にも向き合える

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る