morinoat_34
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飲み代にした話は、今でも記憶に残っています。なんてたくましいんだろうと思いました。 アートの勉強に来ていた人たちから受ける影響も大きかったです。「これがしたい」という確固たる熱量がある人は強い。憧れはありましたが、私には表現したいものへの強い気持ちが足りないということへの葛藤もありました。  でも、自分は何かを表現することよりも、人が作ったものを紹介したり、応援したり、つなげたりということの方が向いているのかもしれない、と気づいたのもその頃です。1012 その後、山梨のホテル「リゾナーレ八ヶ岳」で働いていたとき、本屋を始めるきっかけに出会いました。 最初は営業企画や広報などに関わる仕事をしていたのですが、ホテルの経営母体が変わったタイミングで「物販をやりたい」と希望したら、ホテル内でブックカフェを立ち上げる担当に。 本屋のノウハウなど何も知らない、ゼロからのスタートでしたが、不思議と「そんなのできない」とは思わなかったですね。むしろ自由に本屋をつくれることに喜びを感じていました。それが、今の 「mountain bookcase」 につながっています。  店で自分が選びたい本の条件は、「根底に誠実さがある本」ということ。そして「ひとりの時間に寄り添ってくれる本」であることや「好奇心の扉をあけてくれる本」ということも大切にしています。 あと、たくさん町の人にも来てほしいと思いながら店をつくっているので、自分の興味のあるジャンル のものだけでは、固めないようにしています。選書の際には、「こういう本、あのお客さんは好きだろうな」とか、「あのお客さ思いがけず本屋をやることに人と関わり合う場を耕す

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