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【選択講座 福祉の現場へ】事前学習を経て、乳児院やグループホーム、障がい者施設などの現場を訪れる「福祉の現場へ」。実際にその現場で働く人、生活する人と出会うことで、生徒たちは大きな刺激を受ける。人数が限定されるため、毎回くじ引きになる人気講座だ。【選択講座 林業講座】実際に山の中に入り、間伐などの体験をする「林業講座」。大きな木を自らの力で切り倒すという、なかなかできない経験を生徒たちは積むことになる。その経験を通して林業の道へ進む生徒、あるいは環境問題や生態系に興味を持つ生徒など、関心の広がり方の幅も広い。「生徒から『答えが出ない問題だけど議論が面白かった』という声を聞くと嬉しくなりますね。みんなの中に良いモヤモヤが残り、授業が終わった後も何となく話し合いが続くようになれば成功だと思っています。結論は覚えていなくても『議論が面白かった』という感覚は、生徒の中に残るもの。社会的な問題について考えたいと思っている生徒たちが『議論を通して考えを深められた』と感じてもらえたらと考えています」。たとえば「福祉の現場へ」たとえば「林業講座/森と生きる」 「福祉の現場へ」は、その名の通り障がい者の通所施設やグループホーム、乳児院などの現場に出掛け、人と出会うというのがコンセプト。社会科と人間生活科が、教科の垣根を越えて取り組む講座です。 「乳児院に行って新生児を抱っこさせてもらったりすると、生徒たちはそこで生きている生命に触れて感動するようですが、同時に産まれた直後から乳児院にいるという事情にも思いを馳せるわけです。事前学習で、どういう施設であるかは学んでいますから。そうすると帰り道では言葉が出なくなったりもする。そういう部分も含めて、現場に足を運ぶことの意味は大きいと思います」とは、担当する新井さんの言葉。昨年はコロナ禍の影響で行けませんでしたが、東日本大震災の被災地である釜石市にも毎年足を運んでいます。 「林業講座」は、その名の通り実際に林業の現場に出向き、間伐などの体験をする職業体験という一面もありますが、そこから環境問題や日本の林業を取り巻く社会の問題や構造、あるいは生態系などに興味を発展させる生徒も少なくありません。林業の体験を入り口に、社会問題だけでなく自然科学にも関心が向く、教科の枠を超えた理科と社会がクロスオーバーする講座です。 「大学に進学する生徒ばかりではありませんので、実際の職業に触れる体験ができる講座も提供したいと考えています。この講座を選択したことで、その後大学の林学科へ進んだ生徒もいますし、10社会の授業で学んだ内容とつなげて考える子や、自然そのものに関心を広げる子など受け取り方は様々です」と担当する鬼沢さんは語ります。 「ただ、その後どんな道に進むにしても山の中で木を切り倒す体験をしていることは、教室で学んだこととはまったく違った意味を持ちます。そういう多様な経験をしたうえで進路を選ぶことは高校教育の重要な意味だと考えているので、様々な選択講座を用意していることは、そうしたニーズに応えることにもなっていると思います」。 また、林業講座の授業で切り出した木は、「森と生きる」という講座で活用され、学園の施設の一部にも使われています。この講座では間伐材を利用して、校内に東屋を建てていて、山から木を運び出すところから、穴を掘って柱を建て、屋根を乗せてと、すべて生徒たちの手によって進められます。 建てた東屋は木工の授業でも使われますが、担当の野口さんは「ゆくゆくは朽ち果てて土に戻り、そこに畑をつくるというところまで視野に入れたい」と話します。 こうした自然とのつながりを体感できる講座は、ほかにも学校周辺エリアの生態系に触れる「小岩井生態学」や、種子を通して人々の暮らしを見直す「タネ」なども人気で、校外へ出かけるスタディツアーも行われています。 コロナ禍によって、大々的に取り組むのは、もう少し先になりますが、今後は、選択講座と連動したスタディツアーを、さらに充実させていく予定。それぞれのテーマに興味を持った生徒が集まる選択講座をベースとするツアーは、単なる旅行を超えて、深い学びが得られると期待されています。 自身が興味を持って選んだテーマだからこそ、深く学ぶことができる選択講座。進路や受験への布石として講座を選ぶ生徒もいれば、日常の中では手が届かない経験に触れてみようとする、「今」の興味のままに選ぶ生徒もいます。 いずれにしても、そこで出会った「選び取った体験」や、その中で得られたものは、その後の人生にも大きな影響を与えるのではないでしょうか。キャリア形成につながる教科を超えた学びより深い体験へと結びつける「スタディツアー」へ

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