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11高校で出会った「女性学」 最近まで、埼玉県の男女共同参画推進センターにコーディネーターとして勤めていましたが、現在はいくつかの大学で非常勤講師としてジェンダー関連の講義を担当しています。また、そのほかに「国際セーフ・アボーション・デーJapanプロジェクト」という取り組みにも参加しています。これは、女性の安全な避妊と中絶を求めるための活動です。 「安全な中絶」というテーマに、強いインパクトを覚える人もいるかと思います。しかしこれは、女性にとって自分の身体についての自己決定に関わる重要な課題だと考えています。 この問題に初めて触れたのは、自由の森学園在学中、当時あった選択講座「女性学」で見た『中絶:北と南の女たち』というドキュメンタリーです。1984年にカナダで制作されたこの映画には、中絶が違法とされる国や地域で、危険な闇中絶によって女性が命を落としている実態などが描かれていました。 全編を通して、女性が自身の身体に起こる出来事について決定権をもつことは、女性がひとりの人間として生きるために重要であるということ、そして、国や制度、他者から、強制を受けず、自分の人生や身体を自分のものにしていくことが大事だということが訴えられていました。 ちなみに日本には、現在も刑法に「堕胎罪」があります。プロジェクトでは、この撤廃にも取り組んでいます。女性の誰もが一様の「女性」ではない 大学、大学院でも女性学の研究が私の活動の中心でした。大学時代の研究テーマは「介護とジェンダー」。家の中で、女性が無償で介護を行うことが当たり前という社会の風潮にフォーカスしました。 本当はそれを引き受ける人がいるからこそ、誰かが報酬のある労働ができ、暮らしが成り立っているはずなのですが、ケア労働は無報酬で価値が低い労働かのように扱われている事実がある。介護に限らず、子育てや家事全般についてもそうです。 その研究と並行して、当時、家や施設から離れて、介助者を入れて地域でSeyama Norikoいろいろな生き方ができる社会を「当たり前」にもりのあとを歩く6期生瀬山 紀子 さん54瀬山 紀子さん〈6期生〉1974年群馬生まれ。自由の森学園高等学校卒業後、京都精華大学人文学部を経て、お茶の水女子大学人間文化研究科博士後期課程(比較社会文化学)単位取得後退学。その後、複数の公立女性関連施設にコーディネーターとして勤務。現在、明治大学、淑徳大学など、複数の大学にて非常勤講師を務める。近著に『官製ワーキングプアの女性たち』(岩波ブックレット)、『災害女性学をつくる』(生活思想社)がある。

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