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55 この箱に入っていた課題は、読む・見る・書くのバランスに配慮された、一人ひとりが家にいながら、学園で日頃行われている学びに触れられるもの。学習の遅れを補うために…… という性質のものではないといいます。 「4月半ば。本当だったら、教室で体験していた学ぶ楽しみを少しでも伝えられればと、教員総出で取り組みました。各教科が生徒に届けたい思いが、たっぷり詰まったものだったと思います(新井高校校長)」。 ウェルカムボックス送付後、保護者からは「箱を開けながらワクワクしているのが伝わってきた」「子どもが『やっと中学生になった気がする』と静かに喜びを噛みしめていた」という声が寄せられたそうです。「話し合う」から「走りながら考える」へ オンラインによる活動を始めることには賛否がありました。「自由の森の学びはライブじゃないと意味がない、一方的な動画で成り立たない」。多かれ少なかれ、教員誰もがそういう思いをいだいたものの、かといって他に効果的な何かがあるかというとそうでもない中、「それなら、まずは試しに作ってみてもいいじゃないか」という声が上がりました。 こうして「話し合う」から「走りながら考える」にシフトした転機に立ち上げたのが、生徒専用の動画サイト「JIYUTube」。言うまでもなく、あの有名サイトからインスピレーションをいただいたサービス名です。 最初にアップされた動画は、体育科の「たまごを立てる」。生たまごがバランスを保つポイントを探して、立ててみようというもの。それを、体育科の教員全員でチャレンジした様子を動画にまとめました。 「カメラは誰かのスマートフォン。撮り直しなしの一発撮りです。新任の秋葉さんは、勤務初日でした。体育科教員として初めての仕事がたまご立て。さぞ戸惑ったでしょうね」と、教員の宮内麻友美(体育科)さんは話します。 体育科がたまごを立てる動画? と思う方も多いかもしれませんが、遊んでいるわけではありません。実は「自分の重心を探る」という、中1と高1の最初に取り組む授業の延長上にあるものです。 やがてリアルで学ぶものの入り口となるきっかけづくり。それは動画でもできるんじゃないか——。この動画を見た教職員の間に、そんな希望が芽生えました。動画から始まる「学びの広がり」もある 率直に言うと、ITにはそれほど強くない自由の森ですが、その後、各教科が次々に企画、撮影した「JIYUTube」の動画は2ヵ月で100本を超えました。生徒達からの評判も上々の様子。動画にリアクションする機能を実装したことで、リアルタイムではなくとも、双方向のやりとりもできるようになりました。 「面白い、もっと知りたいと思ってもらえる動画づくりを心がけました。これは動画だろうがリアルな授業だろうが共通です。『おっ』と思う仕掛けがないと、顔見知りの教員が出ているとはいえ、素人の動画なんてずっと見てくれやしません。といっても、私も動画はまったくのど素人。JIYUTubeの取り組みが決まった時から猛勉強しただけなのですけども」。そう語るのは、JIYUTubeのプロデューサー的な立場から、動画のほとんどについてフィニッシュも担当した、石井徹尚中学教頭(理科)。石井さんは、JIYUTubeを始める際に、もうひとつの意図を潜りこませたといいます。 「動画リストのページは、一応学年ごと、教科ごとに分けたインターフェイスにしていますが、ログインした生徒はすべての学年の動画を見られる様にしました。そうすることで『高学年が音楽で取り組む憧れの楽曲を聴いてみよう』とか、『授業が重なっていて履修できなかった、林業の授業をのぞいてみよう』といった、リアルではアプローチできなかった学びに触れられる。保護者の皆さんにも、お子さんの学びの今やその先にあるものにウェルカムボックスの告知(左)と、JIYUTube1本目として配信された「たまごを立てる」(右)。その後、2ヵ月で100本以上の動画が制作された。いずれの動画も、何かに到達することを目指した内容ではなく、学びの喜びを共に感じようとするもの、登校開始後にみんなで向き合うテーマを共有するものなどが多勢を占めた。JIYUTubeの動画を一部公開していますJIYUTube OPENhttps://www.jiyunomori.ac.jp/gakuen/jytopen.php

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