morinoat_29
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11順位という違和感 小学校のときに好きだった短距離走ですが、同時に違和感ももっていました。僕は足が速かったので、大抵1位か悪くて2位。運動会で走り終えた後に「順位の旗のところに並ぶ」行為に違和感を覚えていました。勝つ人と負ける人がいつも決まっていて、僕より足が遅い友人は「いたちゃんと走ると勝てないよ」と悲しげにスタートラインに立つんです。自分の気持ちのなかに、勝つ喜びと敗者への憐みが共存してモヤモヤしていました。 それが山なら、誰でも歩いてさえいればゴールに近づきます。もちろんある程頂をめざして一歩一歩 登山ガイドを生業のひとつとしています。年間130日くらい山に入ります。山登りの魅力のひとつは競争がないこと。自分で決めたゴールに向かって自分の足でコツコツと歩みを進めると、いつか山頂にたどり着きます。そこで得られる清々しさは、他に代えがたいものがあります。 この感覚に気づいたのは、自由の森学園在学時。中2当時の恒例行事だった八ヶ岳登山です。目指すは標高2,899mの主峰、赤岳。 当時の僕は小学校で陸上競技をやっていたこともあり、短距離走が好きで、すぐに結果がでない行為に対してモチベーションを維持するのが難しかったのです。でも、この登山で出発前に当時の校長だった依田さんが発した、「一歩一歩進めば必ず山頂に立てるのです」という一言で、何かが変わりました。この言葉が不思議とスッと自分のなかに入ってきて、遠くに見える頂を見つめながら「あぁ、あの頂をめざせばいいんだ」って。そして、歩き始めたらどんどん頂が近づいてくる感覚。この感覚が楽しみに変わっていったのです。 もっとも、僕がその時に見ていた頂は、赤岳の手前にある阿弥陀岳という違う山で、勘違いだったのですが。河野 格さん〈18期生〉1986年埼玉県生まれ。自由の森学園高等学校卒業後、都留文科大学文学部を経て、NPO法人都留環境フォーラムで環境教育活動に従事。2016年、日本山岳ガイド協会登山ガイドステージⅡ取得。ハイキングから夏山縦走、雪山登山まで幅広くガイド業を行う。またプロジェクトアドベンチャーのファシリテーターとしても活躍中。登山ガイド 河野 格 ウェブサイトhttp://itarukouno.planet.bindcloud.jpKouno Itaru自分らしく前に進める登山を一人ひとりにもりのあとを歩く18期生河野 格 さん48

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