9まっとうな市民感覚こそが日韓友好のカギ 日本と韓国との関係は深く、ここ10年ほどは輸出入総額を見ても米国、中国に次ぐ貿易相手国(※1)であり、1~2番目に訪日外客数の多い国(※2)でした。またK-POPが日本のヒットチャートをにぎわせ、韓国風のホットドッグ「ハットグ」に行列ができるなど、身近なところでも韓国文化を感じられます。 とはいえ、2019年の日韓関係にはネガティブな印象を持った人が多かったかもしれません。徴用工問題、日本の輸出管理で優遇する「ホワイト国」からの韓国除外、あいちトリエンナーレでの少女像の展示中止、対する日本製品のボイコット、訪日客の激減などなど、政治や経済、芸術まで巻きこんだ喧噪は記憶に新しいと思います。夏のスタディツアーの出発前には何人かの保護者から「本当に行くんですか?」との問い合わせもあったとか。自由の森学園一行に不安はなかったのでしょうか。現地を訪れ、ふれ合う中で感じる「市民感覚の成熟」 「たしかに日本製品ボイコットみたいなプラカードや横断幕は僕もソウルの街中で見かけました。ですが、日本語で会話しているからなにかされるとかそんなことはありえません。日本だってそうですよね。生徒たちもK-POPやLINEなど国を超えてつながれるツールをたくさん持っています。毎年参加している生徒は現地をよく知っていますから、もとより不安はありません。実際、受け入れ先の家庭でも温かくもてなしていただき、みんな満足して帰ってきました。しかも最近の家庭は裕福で、浴室が2つあるとか、ゲストルームに泊めてもらえるとか、豪華な住まいが多い。日本への反感よりも韓国の経済成長を肌で感じましたね」。 日本の政治に対する反発はある。けれど目の前の高校生は歓迎する。それを藤原さんは「市民感覚が成熟しているから」と受けとめます。 以前、日本の統治時代を知る高齢者にインタビューしたときも温かな対応に驚いたといいます。 「2009年頃でしたか、自由の森とサンマウルの生徒が韓国の高齢者のお宅を訪問してお話をうかがったんです。僕たちは当然『当時はつらかった』『日本人には本当に悩まされた』といった厳しい話になると予想していました。それくらいのほうが生徒にとっては勉強になるかもしれないなと、そんなことを考えながら扉を叩いたんです。ところが、つらいこともあったけど優しい日本人もいたんだよといったコメントも出てきて、とてもやわらかな対応だったのです。事前に韓国の生徒だけで訪問したときは結構きついことを語っていたらしく、サンマウルの子たちはびっくりしていました。 で、これは一体どういうことなんだろう? と考えました。やはり真面目に植民地の歴史を学びにきた高校生たちに対して、一方的に非難するようなことはできないんだなと。誠実な対応をすればちゃんと心を開いて交流してくれる。こういうふれあいの中にこそ、日本と韓国が仲良くなれるキッカケがあるように感じます。上)ソウル市南営洞(ナミャンドン)、民主人権記念館にて。韓国の民主化の歴史を共に学ぶ時間を過ごす。右上)サンマウル高校との交流会の1シーン。言葉がスムーズに伝わらないながらも、関わり合おうとすることを通して共に親しみが増していく。右下)サンマウル高校でのフォーラムの様子。数名のグループに別れて話し合ったことを発表しあい、さまざまなテーマでおのおのが共感できること、違いがあったことを考えあう時間を過ごした。※1 財務省「貿易相手国上位10カ国の推移(輸出入総額:年ベース)」 ※2 日本政府観光局「年別 国・地域ごとの訪日外客数の推移」
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