8 「署名運動をする」 「お互いの国で靴磨きをする」 「日本のニュースのあり方を変える」 いくつかの意見が出る一方で、 「たまたまその国に生まれただけなのに、なぜ日本人だから韓国人だからといがみあわなきゃいけないんだろう」 「韓国を叩く人は心に余裕がなさそうじゃない?」 「韓国アンチの人たちがどんな教育を受けてきたのか気になる」 といった、問題の本質にふれる疑問も。正解のない問いに立ち向かうため、午後の授業時間を目一杯使ってじっくりと意見を交換します。 「きれい事やお仕着せの意見ではなく、自分ごととして考えてもらうことが重要です。フリーハグという提案したのもそのため。バーチャルなネットの時代にあって、実社会との距離を縮める工夫が必要なんです」と藤原さんは意図を明かします。 「10年ほど前には、来日したサンマウル高校の生徒たちと一緒に朝鮮高校を訪受験戦争から距離を置く、韓国の代案学校(オルタナティブスクール)との交流れて、交流するイベントも開催しました。韓国と北朝鮮の人々が交流することは国家保安法などで禁じられており、その運用は時の政権のさじ加減次第といわれましたが、幸いにもフォーラムを行うことができました。 拉致問題に揺れていた時期でもあり、朝鮮学校の生徒たちはやはり緊張していたようです。どこか大人の顔を見ながら話すような硬い空気がありました。それでも、お互いのことを語りあう希有な時間を持つことができました。こうした機会をどんどんつくりたいと思います」。共通の歴史認識と教育観を持つ姉妹校 韓国講座開講のきっかけは1995年にさかのぼります。ちょうど戦後50年を迎えた節目の年。社会科の教員たちが近現代史の授業をする中で、日本と朝鮮半島との歴史をもう少し深く掘り下げたいと考え、現地を見学するツアーを企画。当時の教員8名が、植民地時代の象徴だった朝鮮総督府を解体するイベントを見学し、あわせて韓国の歴史教員と対話する場を得たことから交流がスタートしました。 その3年後に選択講座として「韓国講座」がスタート。ソウルの東に位置する河南市の河南高校を訪れるスタディツアーが初開催されました。さらに2007年には江華島にあるサンマウル高校との交流も始まり、両校を訪れる8泊9日の研修スタイルが定着しました。 サンマウル高校とは2014年8月に姉妹校提携を締結しています。 「韓国は受験戦争が激しい国です。全国一斉に実施される大学修学能力試験合格をめざして勉強漬けになる高校生が少なくありません。しかしそういった状況に疑問を持ち、子どもたちの目線に立った教育を志す学校も当然あるわけです。こうした学校は代案学校(オルタナティブスクール)と呼ばれます。 そのひとつであるサンマウル高校は、自然・平和・共生を基本理念に置いた、自由の森学園との親和性がとても高い学校です。教員の皆さんも私たちと共通の歴史認識を持ち、かつ両国が交流を深めながら歴史を見つめあう大切さを生徒たちに伝えていこうという教育観も共有しています。ちょっとしたトラブルでは壊れない確固とした信頼関係が築けています」と藤原さん。 姉妹校提携のタイミングも絆を深めた一因のようです。東日本大震災や原発事故の動揺が色濃く残る中、サンマウル高校のアン校長はこう語ったそうです。 「相手が大変なときに助け合うのが本当の友人です。いま日本は大変な状況にあります。だからこそ私たちは姉妹校として提携する必要があるのです」。上)空港でのファーストコンタクト。河南高校の生徒が、自由の森学園の生徒の名前が書かれたネームプレートで歓迎してくれた。右)フォーラムでのグループ討論より。両校入り混じってひとつのテーマを掘り下げていく貴重な時間。
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