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9座学と体験から日々の学びがつながる このように、アジア学院での体験学習は単なる農業体験にとどまらず、食に対する再発見や異文化理解などが生徒たちの視野を大きく広げています。 「日頃の授業の中で行われる平和学習や『食べもの』『農業』といった選択講座での学びも下地になっていると思います。資源や飢餓、搾取の問題など、さまざまな問題を調べていくうちに、複数の学びがつながっていることに気づいていきます。そこにアジア学院での体験がさらに別の視点を与えてくれるのではないでしょうか。自分たちが消費者として着たり食べたりしているファストファッションやフードが、別の国からの搾取でなりたっている現状、食の不均衡を解決することが平和への糸口になることなど、さまざまな課題を生徒たちは見出しています。この体験をくぐったことは、これから社会科の自分の常識を疑い、他者の意見に耳を傾ける経験授業で生徒が書くレポートの内容にも大きく影響を与えるものだと思います」(渡部さん)。フードライフを通して平和を実現する 多文化と出会って自分の常識を疑い、他者の意見に耳を傾ける経験。それが、宗教や民族などの垣根を越えるきっかけにもなっているようだと山下さんは話します。 「内戦が起きている国で敵対している人たちが、アジア学院で一緒に作業することがあります。表面上はなにごともないような表情を装っていても、殺した側、殺された側いずれにもわだかまりがあります。そういったものが日を重ねるに連れて氷解していくことがありますね。カーストの上位層だったヒンズー教徒の学生が、最下位層の不可触民の学生との生活を経験して、帰国後にカースト撤廃の活動を始めたケースもあります。アジア学院にはフードライフを通して平和を伝えていくという使命もありますから、非常に喜ばしいことです」。 ほかにもジャングルを切り拓いて学校を創設したアジア学院の卒業生もいるそうで、山下さんは興味を持ち、現地を訪れたそうです。 「もともと牧師をしている方だったのですが、ジャングルの奥地の村を訪れた時に、医療や教育へのアクセスがほとんどないことに驚いたそうです。そこで自ら学校を建てたものの、大人の教育への偏見が根強く、当初は子ども達に学校に来てもらうのが大変だったとか。きっと労働力を奪われたり、集落を出ていかれたりするのでは、と大人が不安を感じたのでしょう。その学校は教師が少ないため、テキストを渡したあとは基本的に自習。分からないことがあったときだけ旗を立てると先生が来てくれるシステムでした。みんな家の農作業などで毎回授業に参加できるわけではないので、自分のペースで学習最終日、同じ日程でアジア学院での体験学習に臨んでいた「聖隷クリストファー高等学校(静岡県)」の皆さんとの対話の時間。アジア学院で過ごした3日間の中で、感じたこと、考えたことを話し合う。教員も生徒も入り交じって対話をすることを通して、自分の中にはなかった他者の価値観に触れていく。正しさにとらわれず、自分の英語を駆使してコミュニケーションすることを大切に。そこで出会う喜びは、丸暗記の英語では味わえない。

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