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7小玉 重夫 教授1960年生まれ。東京大学法学部政治コース卒業、同大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。慶應義塾大学教職課程センター助教授、お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科教授などを経て、現在、東京大学大学院教育学研究科教授。副研究科長。専門は、教育哲学、アメリカ教育思想、戦後日本の教育思想史。教育における人間と政治、社会との関係を思想研究によって問い直すことを研究テーマにしている。近著に『教育政治学を拓く 18歳選挙権の時代を見すえて』(勁草書房)、『教育の再定義(岩波講座 教育 変革への展望 第1巻)』(共編著、岩波書店)など。東京大学大学院 教育学研究科学校インターンシップがスタート小玉教授(以下、小玉):去年、東大から教育実習生を1名受け入れていただきました。19年度からは「学校インターンシップ」という形で学生・院生を送り出します。教育実習という正規のカリキュラムを導入する前に、教育学を学ぶ人間がもう少しゆるやかな形で自由の森の実践を体験できるようになります。菅間教頭(以下、菅間):先日は、インターンシップを希望する3名の方に授業を見てもらいました。感想や関わり方の要望などを出してもらい、僕らの希望と突き合わせながら無理のない範囲で活動を始めます。学生寮でショートステイしながらなのか、一定の頻度で通ってもらうのか、3名の研究スケジュールやテンポなどに合わせて一緒に考えていきます。まだモデルケースというかパイロッ既存の価値観に懐疑的な学生の「研究と実践の場」としての自由の森学園的な非常に問題意識の高い学生が一定数いるんです。その人たちを伸ばす場として自由の森との連携を活用していきたいですね。研究も実践もできる場として魅力があると思います。菅間:実際に、協定締結後に学園に見学にいらした院生が1名、非常勤講師になっています。また非常勤の寮監になった人もいて、数学の教員と熱心に授業研究をしています。現場ではすでにそういう相互作用が起こり始めていますよ。きっかけは生徒参加型の公開教育研究会(※1)菅間:簡単に協定までの経緯を振り返ってみたいと思います。この協定を結ぶ10年以上前に僕と小玉さんとは雑誌『教育』の座談会でご一緒して、その後僕が日本教育学会の東京地区研究会に呼ばれたり、小玉さんが校長をされていた東大附属中等教育学校の公開研究会におじゃましたりと、多少の交流はあったんですよね。それで2016年の自由の森の公開教育研究会の時に、私が選択講座「政治・経済演習」の報告をするのでとお声をかけたら快く学園に足を運んでくださった。授業とそのあとの授業検討会、社会科教科分科会にも参加されて学園への関心を深め、今回の協定につながったと伺っています。具体的に学園のどんな点に興味を持たれましたか。小玉:2つの発見といいますか、驚きがあったのです。ひとつは高校生が「自分ト事業みたいなところがあるので、本当に手探りで試行錯誤しながら進めているところです。小玉:院生2名、学部3年生1名でしたね。菅間:はい。そのうち1名が中国出身の方でした。向こうは今すさまじい受験社会だそうで、自由の森を見て考えさせられたとおっしゃっていました。大学院では思春期における架空の他者との対話を研究していると聞きました。もう1名の院生は臨床哲学をやりたいと。生活の現場で生じる事態に言葉を付与する作業を考えたいとのことでした。学部3年生の方は、学びのモチベーション作りに関心があるとか。どれも自由の森に親和的なテーマだと感じます。小玉:うちの教育学部や教育学研究科には、既存の価値観や支配的な言説に懐疑2017年7月、協定を締結した調印式での1枚。左は研究科長当時の小玉教授。右は新井自由の森学園高校校長。※1 公開教育研究会年に1回、自由の森学園でふだん行われている授業や諸活動の内容を公開する会。中高すべてのクラスで行われている授業を公開するとともに、教科別とテーマ別の分科会が行われ、市民や教育関係者、保護者、生徒が参加して、毎年実践の質を高めるべく活発に議論が行われる。誰でも参加可能(有料。ただし入学希望者とその保護者をのぞく)。

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