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57川尻 麻ま美み夏か さん自由の森学園高等学校卒業後、筑波大学人文・文化学群 人文学類に入学。同大学院を経て、2001年、人形劇団プークに入団。現在、国際人形劇連盟(UNIMA)日本センター副会長。4期生。ている園児たちも劇の世界に引き込まれ、いつの間にか舞台を共有しているかのように、人形に向かって「後ろにいるよ〜!」などと声をかけたりするようになっていました。 「人形劇には、ハンドパペットと呼ばれる手に付けて動かすものから、マリオネットのように上から糸で操るもの、逆に下から棒で動かす棒遣い人形など、様々な種類があります。演者も舞台に姿を現さないものもあれば、完全に黒子として演じるものや、人形と演者で会話をするようなものまで関わり方も様々です。プークでは、人形を使ったあらゆる形の演じ方をできるようにしています」と麻美夏さんは話します。 人形を動かす技術だけでなく、自らも舞台に登場して劇を演じる役者としてのスキルも求められるのが人形劇。さらに言えば、人形の動きと役者としての演技を調和させることも求められます。 「例えば、自分も舞台に出ながら人形を右に向ける動きをする時、人間が先に右を向いてしまうと、観ている人の視線もそっちに行ってしまう。まず、人形を右に向かせてから一瞬遅れて人間もそちらを向くようにしたり、結構細かい技術が求められます。そこが面白さでもあるのですが、奥は深いですね」昭和初期設立日本最古の人形劇団 人形劇と聞いても、子どもの頃に見たことがあるという程度で、あまり馴染みのない人が多いかもしれません。しかし、国内で最も歴史のある現代人形劇団である「人形劇団プーク」は1929年に創立され、来年で90周年を迎えるとのこと。実はかなり長い歴史を持つエンターテイメントなのです。 「ヨーロッパでは1920年代に第一次世界大戦への反省から、“ワンダーフォーゲル”運動など多くの平和のための文化運動が盛んになりました。人形劇もそのひとつで、その流れを受けた人たちが日本でも人形劇団を立ち上げたようです。もっと言えば、日本には文楽という人形浄瑠璃がありますから、古くから人形を使った劇が演じられていたことになると思います」と話してくれたのは、自由の森学園の4期生でありプークの役者として多くの公演をこなしている川尻麻美夏さん。2001年に入団し、十数年のキャリアになりますが、自身では「まだまだ生まれたてのヒヨコのようなもの」と笑います。 「プークには70人くらいのメンバーがいますが、65歳を過ぎた役者さんもいて、この世界では70歳を超えている人も珍しくない。いくつになっても技術は上手くなりますし、上達には天井がないんです。人形を動かすスキルも、演者としての感情表現も、もっともっと上手くなりたいですね」 公演は保育園などに足を運んで行う子ども向けのものから、大きなホールで演じる大人向けのものまで様々な規模があり、テレビにもレギュラー出演しているとのこと。また、プークは渋谷区に自前の劇場も持っているため、そこでの公演に出ることもあります。 「人形劇というと、どうしても子ども向けというイメージが強いですが、大人も楽しめる作品がたくさんあります。“3歳から88歳まで誰が見ても楽しめる”というのが、プークのモットーですが、もっと幅広い年齢の人に楽しんでもらえたらと思っています」人形と役者の様々な関係性の中でつくりだされる世界観 先日、牛込成城幼稚園で行われた出張公演の様子を観せてもらいました。多くの人がイメージする、手にはめた人形だけを舞台上に出して動かす形式で始まった劇は、途中から演者も子どもたちの前に姿を現し、人形とともに舞台を広く使って演じるかたちに。それとともに観3歳から88歳まで誰が見ても楽しめる。それがプークの人形劇のモットー

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