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9も4にもなるでしょう。子どもたち自身にも刺激になりますし、自分たちが地域社会を担うキーパーソンだという意識が芽生える。それこそ、ESDの目標である主権者教育につながる学びだと思います。松元:ありがとうございます。地域の博物館や図書館から、生徒たちが調べた成果を展示しないかという話はもらっていますが、今後は、地域に対してフィードバックしていく機会をさらに増やしていきたいと思います。過去の林業従事者の歩みを追体験する「ナイトウォーク」石井:つい先日、ナイトウォークといって学園から名栗の奥にある「名栗げんきプラザ」という県立の課外活動施設まで約24kmの道のりを歩く取り組みをしました。名栗で伐り出した西川材を、飯能まで筏に組んで出荷した林業従事者たち松元:飯能市は元々高麗郡の一部で、地元には高麗神社もあります。朝鮮半島にあった高句麗の王族が渡ってきて開いたとされる神社で、今でも地元の人たちには大切にされています。私たちが訪問した時は、ちょうど北朝鮮のミサイル危機が叫ばれている時期で、Jアラートが世の中を騒がしている中、高麗神社に参拝に行けたことも生徒たちにとっては良い学びになったのではないかと思います。阿部:それはまたいいタイミングでしたね。自分たちの暮らす地域、つまりローカルがグローバルにつながっているということを意識するには、とても大切な学びの機会だったのではないかと思います。松元:中学1年の最後には、1年間の学びの集大成として、飯能市の市長さんに宛てた手紙を生徒たちが書きました。各々が飯能の魅力をどうアピールしたらいいのか? ということを考え、手紙にまとめたんです。ダメ元で飯能市に連絡を取ったら、市長が直々に受け取ってくれることになって手渡しに行くことができました。生徒たちもさすがに緊張していましたが、自分たちの声を行政に届けられたということで、手応えを感じている様子でした。阿部:そうやって子どもたちが調べたり学んだりしたことを、行政に限らず地域の大人たちにフィードバックすることは非常に価値があることだと思います。子どもたちの視点で地域の価値を発見することは、地元の人たちが一番喜びますし、地域の活性化につながる。特に、子どもたちの声で直接伝えるのが効果的です。欲をいえば、地域の大人も巻き込んで一緒に動けるようになると、1+1が3にが地元まで歩いて帰った道程を追体験しようという試みです。当時の人たちも、この季節は暑い日中ではなく、涼しくなるまで市中で飲み歩いたりして、夜になってから歩いたのではないでしょうか。保護者の皆さんにも大勢参加していただき、無事約8時間の道程を歩き切ることができました。途中でホタルを見たり、養蚕をしていた家を通ったり、さまざまな体験を通して地域を学ぶことができたと思います。松元:中2生の足で歩くには結構な距離なので、文句のひとつも出るかと思っていたのですが、予想以上に楽しめたようで、後日のまとめにも皆んな積極的に参加していたのが印象的でした。「げんきプラザ」の職員さんたちも意図を伝えたら理解してくれて、到着が夜遅くになるにもかかわらず、お風呂の準備をして待っていてくださいました。石井 徹てつ尚ひさ自由の森学園 理科教員東京農業大学、同大学博士課程にて学んだのち、埼玉県職員(森づくり課)、私立中学高校、公立高校教員を経て2012年より現職。10期生。学校から約8キロ地点にあるカフェ、「ヤナギコーヒー」さんは、休憩所としてフロアをご提供していただいた。地域の方々の積極的な協力も、新たな試みを力強く支えた。【ナイトウォーク】軽食の用意や安全面の確保など、保護者の皆さんにもたくさんのサポートをしていただき実現したナイトウォーク。往復24kmという道のりを全員が無事フィニッシュした。「自分たちが地域社会を担うキーパーソンだ」という意識の芽生え

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