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8阿部:その通りだと思いますよ。自由の森学園に社会問題について積極的に関心を持つ生徒が多いのも、普段から生徒たちの自由意志が大切にされていることと無関係ではないはずです。普段から大切にされているからこそ、それを脅かされることに対して敏感なのでしょう。地域の学びを通して人々とつながる松元:ここからはユネスコスクールに加盟してからの取り組みについて、ご紹介させていただきます。私たち2人は昨年中学1年生の担任を受け持っていたのですが、中学の総合学習の時間はすべて地元の飯能について学ぶ時間としました。この地域は、先程ご紹介いただいた西川材の林業と養蚕を両輪とする産業で、江戸時代から持続可能な社会を築いてきました。そういう地域の歴史や産業について知ってもらおうと、この1年間はとにかく飯能の街を自分たちの足で歩くこと役割はますます大きくなっています。そうした意味で、地域社会にとっても自由の森学園の存在は大きな意義を持つようになっていると思います。私は環境教育が専門ではありますが、環境保護というのは入り口でしかなく、大きな目的は持続可能な社会を作ることにあります。そのためには社会の中で多様性を持った人たちがお互いに認め合える多文化共生ができる社会が不可欠です。自由の森学園の教育はそういう多様性を認め合う感性を育てるという意味でも大きな力を持っていると感じています。石井:私も生物の理科教員なのでよくわかりますが、どうして自然環境を守りたいと思うのかというと、他者をないがしろにしないという気持ちがベースにあるのだと思います。地域の緑を守りたいと思う気持ちや、古くからある産業を大切にするという気持ちは、戦争や差別は嫌だなと思う気持ちとベースの部分ではつながっていると思うのです。から始めました。飯能の街中はもちろん、学校の近くを流れる名栗川沿いを歩いたり、林業が行われていた林に入ったりもしました。石井:西川材は名栗川で筏に組まれて江戸の木場まで川を使って運ばれていたわけですが、飯能駅を通っている西武線は今、地下鉄の有楽町線に乗り入れて新木場までつながっているんです。そんな彼らが体感として知っている現代の様子とミックスして伝えると、生徒たちもぐっと興味を持ってくれます。阿部:確かに、昔の話をただ聞くのではなく、今の自分たちの生活につながっていることが感じられると、生徒たちの興味の持ち方も変わってきますよね。松元:林業の体験もして、実際に間伐材を使って遊具を作ってみたりもしたいと話しています。一方で、飯能市は工業団地を誘致しているので、開発が進んでいる現場を見に行って20年後、50年後を考え、どうするのがいいのか? というような話し合いもしました。そうやって自分たちの足で歩いて、お腹が空いたら地元の野菜を使ったうどんを食べたりすると、野菜が好きでない生徒もよく食べてくれたりするのが面白いですね。阿部:作っている人の顔が見えるというか、「存在が感じられる」のでしょうね。不思議と味も変わってくるのかもしれませんね。松元 大地自由の森学園 数学科教員城西大学理学部数学科、同大学院卒業後、教育系編集プロダクションでのアルバイトや音楽活動に取り組む期間を経て、2013年より現職。11期生。街歩きの中で発見したことはまとめて発表する。学習発表会では、数々の散策成果が廊下に掲出された。【森の時間:飯能を歩く】総合的学習の時間である「森の時間」を、地域の探索をする時間に活用した。飯能市内を歩くと蔵が多く残存しており、盛んに商いが行われていた街であることが分かる。最近では放置されていた蔵を活用して飲食店にする取り組みも活発。写真の蔵は明治39年蔵。現在は人気のガレット屋さん。環境保護は入り口。大きな目的は持続可能な社会を作ることにあります

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