morinoat_019
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くるんですよね。この木に囲まれた教室が、いずれ生徒達が懐かしく思い出す教室になると思うと感慨深いです。日高:図面には表れない職人さんの技も実は大切なところです。建具には建具屋さんの心意気が表れています。ロッカーの扉は木材の柾目(まさめ:木目の種類。木の中心付近を使用した木材に現れる、平行に年輪が出ている木目)の美しさ、ドアは杉材ならではの紅白のグラデーションが見事です。一つとして同じ素材はない無垢材だからこそ、職人の腕にかかってくる部分は大きい。岩田:私は天井板を放射線状に貼るという設計案がとても気に入ったんです。普通に平行に貼る案も出されていましたが、なんというか、このデザインの豊かに穏やかに広がっていく感じがよかった。大工さんたちは大変だと思うけど。日比:壁は色目のバランスなどを見てい本物を身近に感じる岩田:今は柱が見える家に住んでいる 生徒は少数派。無垢材なんて触ったことがない子ども達が多い。杉の木にふれる経験はなかなか貴重な機会ですよね。それに地場の材を使うことで、教室そのものが教材になっている側面もある。知識としては知っていた飯能の西川材が、生活の中にあるっていう。日高:確かに、現在は合板や集成材ばかりで、私が教えている大学生でも無垢材を知らない子がたくさんいます。木材の授業で合板を見せながら「これは本物の木じゃないんだよ」と言うと驚くほど。だからこそ、私は香りや触感を大切にした「本物」が五感に響く場づくりを大切にしたい。日比:それに無垢材は、時間が経つと変化していきます。ただ古くなっていくんじゃなくて時間が経ったなりの味が出てますが、天井はあまり悩まず、わりとランダムに貼っていますよ。天井は板の枚数が多いので、その方がうまくいくように思います。考え込んでしまうと、むしろ変な偏りが出ちゃう。ランダムってなにげに難しいんです。この木に囲まれた教室がいずれ生徒達が懐かしく思い出す教室になると思うと感慨深いです。日比建築工房代表。自由の森学園卒業後、都留文科大学文学部社会学科を経て長野県で家具製作の職業訓練を受け、木工作家に弟子入り。ものづくりの経験を積んで、大工の道へ。現在、埼玉県日高市に拠点を置き、家づくりの現場で活躍中。6期生。日比 夢就さん912枚の杉板のグラデーションが美しいドア。12歳で入学し、新しい生活への扉を開ける生徒たちへの思いを込めた。

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