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いつもの「卒業」をつくれないー。
さまざまな想いが交錯する2月28日

【2月28日 朝】
生徒たちの意見を踏まえ
卒業のカタチが縮小へ

大地さんはSNSへ書き込んだ思いを書面にして、朝一番で職員室へ持参しました。それを受けた職員会議では、生徒のみんなの声を聞いて考えようということになり、急遽開かれた高3の学年集会では、多くの生徒が意見を表明しました。

「卒業式がないと卒業したとは思えなくなる」「絶対やりたい」という声が上がる一方で、「感染によって人を殺す可能性がある行動はしたくない」「万が一の時には学校つぶれるんじゃないの?」という慎重な意見も聞かれました。

これらの意見を踏まえて決まった方針は、3月3日からの休校と学習発表会の中止。そして卒業式の大幅な縮小でした。それは新井達也校長の声で全校放送によって流され、生徒たちの耳に届きました。大地さんが「いつもより、か細くて悲しそうな声だった」と感じたというその放送に、異を唱える者はいなかったそうです。

実現できなかった
生徒主導の「学習発表会」

中止が決まった学習発表会。実行委員を務めていた高3(当時)の岡本瑞綺さんは「卒業をどうつくればいいのか分からなくなった」と言います。「私は、お互いの学びや得たものを見合う学習発表会が好きで、今年はもっと充実したものにしたいと思って実行委員を立ち上げました。

本番目前でまさかの中止。みんなで出した結論は引き受けたいのだけど、『やっぱりやりたい!』という気持ちもぬぐえず、混乱したまま…… というのが本当のところでした」。

2018年度の学習発表会の展示の様子
2018年度の学習発表会の展示の様子

みんなが大切にしていた
「合唱」の危機

自由の森学園の音楽の授業は、基本的にずっと合唱。「自分の声」という楽器と向き合い、他者と声を重ねる時間を大切にしています。授業を離れたところでも歌が身近にあり、多くの行事で合唱の機会があります(体育祭でもなぜか最後は合唱です)。そして、卒業式の合唱もまた、たくさんの人に愛されている時間でした。

しかし新型コロナ事情を考えると、大勢で集まって何曲も歌うなんてもちろんアウト。この時点で詳細は決まっていませんでしたが、現実的に歌えて数曲がいいところです。岡本さんも、「合唱ができないかもしれないという状況は、大きなショックだった」と振り返ります。

岡本さんに限らず、「卒業式で合唱しなかったら、みんなで合唱することは、もうこの先ないんじゃないか」という喪失感とも焦燥感ともつかないような思いは、多くの生徒に共通するものだったに違いありません。

卒業式

放課後。自然発生的に始まった
高3合唱。しかしー

その日の放課後、高3の1人が音楽室で残念そうに3年間歌ってきた曲をピアノで順に奏でていました。すると、何人かの生徒が引き寄せられるように音楽室に集まって歌いはじめたのです。その輪はまたたく間に広がり、校内にいた高3の多くが足を運んだといいます。

高3の歌声は、換気のために開け放たれていた窓から校内に響き渡り、在校生の耳にも広く届いたとか。「男子も女子も、ほとんどの人が泣きながら歌っていて、なんというか他に体験したことのないような神秘的な空間でした」(岡本さん)、「僕もいつもより全身全霊を込めて、声をからして歌いました。参加してよかったと思える幸せな空間だった」(阿部大地さん)。その中には、いてもたってもいられずに足を運んだ教員の姿もありました。

岡本さんが「あの合唱が救いになったし、卒業に向けて一歩を踏み出せた」と言うように、その場にいた多くの卒業生にとって、他に代えることのできない豊かな時間となった合唱の時間。しかし、誰もがその感動を共有したかというと、そうではありませんでした。


「そんな合唱はやるべきではなかった」


そう声をあげたのは、高3(当時)の由比大地さんです。