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自由の森学園のこれまで、今、これからのこと。
Jiyunomori Web Magazine
自由の森学園・考

新型コロナ騒動。そのとき卒業式はー

今年だけの卒業を
「みんな」でつくる

2021.3.24
もりのあと 29 号
2020 卒業式特集を再編集し再掲
卒業式 卒業式

自由の森学園には、「卒業をつくる」という言葉があります。高校3年生一人ひとりが、この場で何を学び、考えてきたのか。どの様な姿で卒業していくのか。自分の中にある思いと、世界や社会の在り方を照らし合わせて、次の自分を見つめていきます。

そんな個人的な活動を集約し、「わたしたちの卒業」として卒業直前に行われるのが「学習発表会」。そして在校生によって企画、運営される卒業式もまた、「卒業をつくる」の集大成となる場です。

新型コロナウイルスによる感染症騒動が、大きな余波を与えた2020年の3月を、私たちは例年とは大きく違う状況で迎えることとなりました。

現実的にあらがうことが難しい自粛の連鎖の中、学園では拙速にトップダウンで方針を決めることなく、生徒と教員の関わりあいの中で、今、実現できる「卒業をつくる」を民主的にカタチにしていく活動がありました。

2月27日。日常をひっくり返す突然の休校要請

多くの生徒が準備を
進めていた高校卒業式

自由の森学園の行事は、基本的に生徒たちがつくります。卒業式も例外ではありません。在校生有志による実行委員会が企画、進行、会場づくりまで、そのほとんどを手掛けます。

今回のテーマは“コウノトリ”でした。テーマをどのように決めるか?という流れにも、決まりはありません。「今回は高1と高2の学年集会を開いて、皆で話し合って決めました。実行委員会で決めてしまう年も多いのですが、送り出す主体である在校生にも伝わり切っていないような気がしたので、今年は全員で決めたかったんです」と話すのは、卒業式実行委員会の委員長だった、高2(当時)の柴田真凜さん。多くの在校生の手によって、卒業式をつくりあげようとしていたことが、伝わってきます。

卒業式には必ずこれをする、という決まりごとはありません。しかし「1人ずつ行われる卒業証書授与」や「10曲以上歌い続ける合唱」、「卒業生や在校生の言葉」などは毎年踏襲されているプログラム。さらに約1時間かけて、卒業生と在校生が言葉を交わし合う「別れの広場」も、定番になっているプログラムのひとつでした。

企画係長だった高2の渡邉栞さんは、「別れの広場に卒業生の写真をスライドショーで流そうと思って、すでに映像も作っていました。高3の合唱音源もその映像に重ねようと思っていたところだったのですが......」と話すように、式に向けた準備は着々と進んでいました。

卒業式

【2月27日】
首相の全国一斉休校要請で
事態が大きく動き始める

卒業に向けた流れが大きく揺らいだ2月27日。この日、安倍首相(当時)によって、新型コロナウイルス対策として全国の学校に一斉休校要請が出されました。

「感染騒動を踏まえた、規模縮小の可能性があるとは聞いていましたが......」と話すのは、実行委員会で議長をしていた高2(当時)の阿部高秀さん。「正直、この要請までは実感がなかったです」と言うように、この休校要請で事態は一気に緊張感を増しました。 「3月2日から春休みまでを休校とする」という要請を飲めば、卒業式はもちろん、生徒たちが学んできたことを発表する「学習発表会」も、中止となる可能性が高まってきました。

卒業をつくる機会が危ぶまれる事態に声を上げたのは、高3(当時)の阿部大地さん。この日、「学習発表会や卒業式は、この学校にいる多くの人たちにとってとても大切な行事であり、これらの行事がなくなると学園生活の終わりという区切りができずに学園生活を終わらせてしまうことになる」という内容をFacebookに投稿。この投稿は広くシェアされ、学内外の多くの人に読まれました。

大地さんによると、学園の生徒をはじめ、大人からも多くの反応が寄せられたといいます。「休校にするにしても、生徒である僕たちにもその責任を取らせてほしいという思いで、あの投稿をしました。卒業式や学習発表会の中止は、誰にとっても苦しい決断になる。その苦しさを、教員だけではなく自分たちも分かち合いたい。僕たちの声も聞いてほしいという一心でした」。