「学習の遅れを補う」ではない
学びの中の関わり合いを続けていくために
ようこそ自由の森へ!
ようこそ新学年へ!
「ウェルカムボックス」
世の中で、急激にオンラインの取り組みが進められていた2020年4月中頃、学園では「ウェルカムボックス」と名付けた箱を全生徒に発送しました。箱には、新学期に使う教材や課題、新入生には今後学ぶ内容についての紹介も同梱されています。オンラインの取り組みも検討されましたが、まずは「リアル」で、ということでアプローチした最初の一手です。
箱に入っている課題は、読む・見る・書くのバランスに配慮された、一人ひとりが家にいながら学園で日頃行われている学びに触れられるもの。学習の遅れを補うために......。という性質のものとは異なります。
ウェルカムボックスについて、保護者からは「箱を開けながらワクワクしているのが伝わってきた」「子どもが『やっと中学生になった気がする』と静かに喜びを噛みしめていた」という声をいただくことができました。


「話し合う」から「走りながら考える」へ
同時にオンライン活動の検討を始めていたこの頃、教員の中でも賛否がありました。
「自由の森の学びはライブじゃないと意味がない。一方的な動画で成り立たない」。多かれ少なかれ、教員誰もがそんな思いをいだいたものの、かといって他に効果的な何かがあるかというとそうでもない状況。「まずは試しにやってみよう」という声が上がりました。
こうして「話し合う」から「走りながら考える」にシフトした転機に立ち上げたのが、生徒専用の動画サイト「JIYUTube」。言うまでもなく、あの有名サイトからインスピレーションをいただいたサービス名です。

最初にアップされた動画は、体育科の『たまごを立てる』。生卵がバランスを保つポイントを探して、立ててみようというものでした。体育科でたまごを立てる?と思う方も多いかもしれませんが、実は「自分の重心を探る」という、中学1年の最初で取り組む授業の延長上にある内容。
いずれリアルで学ぶものの入り口となるきっかけづくり。それは動画でもできるんじゃないかー。この動画を見た教職員の間に、そんな希望が芽生えました。


動画から始まる「学びの広がり」もある
率直に言うと、ITにはそれほど強くない自由の森ですが、その後各教科で撮影した動画は、2ヵ月で100本を超えました。生徒達からの評判も上々。動画にリアクションする機能を実装したことで、リアルタイムではなくとも、双方向のやりとりも可能になりました。
JIYUTubeは、ログインしたユーザーなら誰でも、すべての学年の動画を閲覧できるようにしました。それにより「高学年が音楽で取り組む、憧れの楽曲を聴いてみよう」とか、「授業が重なっていて履修できなかった、林業の授業をのぞいてみよう」といった、これまでアプローチできなかった学びに触れられるように。
保護者の皆さんにも、お子さんの学びの今や、その先にあるものに触れてもらうことができるので、学園の教育をより理解してもらうことにもつながるのではないか。そんな新たな可能性も担っていけると考えました。