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自由の森学園のこれまで、今、これからのこと。
Jiyunomori Web Magazine
自由の森学園・考

それまで「『密』であってこそ」、だった学校が考えたこと

コロナ禍、自由の森学園は
教育活動をどう捉え直したか

2021.6.17
2020 年 もりのあと 30 号
自由の森学園・考を再編集・加筆
コロナ禍、自由の森学園は コロナ禍、自由の森学園は

2020 年初頭から全世界に混乱を及ぼしている、新型コロナウイルス感染症。日本全国の学校に出された休校要請は長引き、新学期に入っても生徒たちは登校できず、授業を受けられない時間が続きました。

学園の教育に不可欠な環境ともいえる「集い、ともに味わいながら学びを深める場」は、まさに「密」。平時の教育活動が決定的に困難な中で、学園は何を軸に据えて新学期を迎えたのか、当時の様子をご紹介します。

どんな状況でも、学校は「学ぶ権利」を
保証していく場であるべき

生徒の学習権を支える

2019 年度末から、教職員の間では幾度となく話し合いが行われました。その議論の根底に常にあったのは、このような事態のもとでも、どのようにして子どもたちの学ぶ権利を保障できるか、ということ。

「(授業ができないことは)仕方ないよ」と言ってくれる生徒もいましたが、仕方ないと受け止めることが、問いを失うことにつながらないようにしたい。答えのない問いに向かっていくのが学びであるからこそ、「仕方ない」が作り出してしまう世界に区切られずに、会えない生徒たちとどのように向き合うべきか考え続けました。

コロナ禍、自由の森学園は

安心が学びの始まりであるように

当時、職員会議であがったのは、特に新たに学園に足を踏み入れ る新中 1、新高 1 生を、支えてあげたいという声です。

前所属の学校でも、休業要請の混乱の中で卒業を迎え、そのまま自由の森にも来れない事態。担任やクラスメイトの顔も分からない、という状況を一歩でも進めてあげたいと、まずは担任が電話をかけるところから始めました。

一人ひとり、家に電話をかけて自己紹介をして、どんな生活をしているか、不安はないかなど話すので、20数人のクラス全員と話すのには数日かかります。

やがて電話の取り組みは全学年に広がりました。進路を決める大切な時期である高3の担任教員は、生徒たちから不満が出てくることも予想していましたが、ひょうひょうと受け止めている生徒の多さに気づきました。

とはいえ、「冷静に受け止めている」というのとも少し違う、「思考を保留している、そうせざるえない心境なんだ」と伝えてくれた生徒もいたといいます。

現状を受け止めるだけで精一杯だというその気持ちを、いかに支えられるかー。生徒たちと久しぶりに会話を交わした教員たちは、この状況の中で、生徒と、その学びのために何ができるのか、問いを重ねる時間が続きました。