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ユネスコスクール準備だより VOL.3 博物館の知見に触れ、深い学びの体験を積み上げていく 埼玉県立 川の博物館との博学連携

2016年、埼玉県寄居町にある埼玉県立川の博物館(以下、かわはく)と自由の森学園理科は、博学連携協定を結びました。かわはくに所属する学芸員の皆さんの知識に触れ、活動に関わるなかで、生物学・生態学・地学・人文学などの複数の専門分野を縦横無尽に行き来する、体験的な学びの場づくりを進めていきます。

ESDイメージ1 学芸員の石井さんが来校して催された、第 2 回展示「土の中の世界、埼玉の地下」のレクチャー会 の様子。ふだん歩いている地面の下に広がっている、想像もしなかった世界に興味津々の生徒たち。 ESDイメージ2 ESDイメージ3 第4回展示・レクチャーは、農学博士でかわはく学芸員の森 圭子さんによる「空から見る荒川」。展示を組み立てるところから生徒が参加して、学芸員直伝の展示の見せ方も学びました。

始まりは「もったいない」

「かわはくでの展示が終了して、廃棄になる予定だった企画展のパネルボードを譲り受けたことが事の始まりでした。目的は真っ白なウラ側の再利用。「もったいない」という気持ちで譲り受けたものの、オモテ側を眺めてみたら、その入念に練られた企画に、教員たちは目を奪われました。そして、ぜひ展示面を生徒たちに見せてあげたいと打診したところ、快く了承していただきました。

「企画した展示が、企画展の期間を超えて、若い人たちの目に触れることは、私たちにとっても嬉しいことです。」と語ってくれたのは、かわはくの学芸員、石井克彦さん。実は石井さん、学園の卒業生でもあります。

学芸員 石井 克彦さん

かわはく 学芸員
石井 克彦さん
自由の森学園高等学校卒業後、東京農業大学農学部林学科を経て埼玉県自然学習センター、埼玉県狭山丘陵いきものふれあいの里センター勤務。2008年より現職。同時に2010年東京農業大学大学院博士後期課程に入学、2013年満期退学。6期生。

知っている場所の知らない世界を探る中で

「なにこれ?」「え、すごいじゃん」理科室前に掲出されたプロ仕込みのパネルに、さっそく立ち止まる生徒たち。最初に掲出されたパネルは「電子顕微鏡で眺めた世界」でした。その様子は見るだけでも美しく、満足できるものでしたが、石井さんが「ただ展示するだけじゃもったいない」と来校。有志の生徒を対象にレクチャーの時間を作ってくれました。

このきっかけを経て、かわはくと学園は博学連携という形をとるようになり、夏には第2回の展示「土の中の世界、埼玉の地下」を実施。この冬からは、「空から見た荒川」というテーマの展示が始まります。もちろん、担当学芸員の方によるレクチャーも開催する予定です。

「埼玉や荒川というテーマは、生徒の皆さんにとっても身近なものだと思います。学園の近くを流れる入間川は荒川に合流する川ですし、通学中に目にする生徒も多いのでは。知っている場所を違う角度から眺めて出会う新たな気づきは、知識を超えて人を惹きつけるもの。自由の森の生徒の皆さんとのレクチャーでは、いつもこれでもかと質問が飛び交います。これは、興味をもつ、考えるという素地が日常的にある、自由の森学園ならではだと思いますね。(石井学芸員)」

ESDイメージ5 埼玉県立川の博物館(通称:かわはく)は、荒川を中心に、川と水、そこに息づく人の暮らしをテーマとする、参加体験型の総合博物館です。本館前にある173kmの荒川を173mで表した荒川大模型は圧巻。

受け取るだけではない双方向型の連携へ

今後は、展示の内容と学園周辺の環境や植物の様子をミックスした取り組みを進めていきたいと考えています。また、情報の収集の仕方、展示の方法そのものを学ぶ機会もつくっていければと思います。手に入れた「気づき」をポスターなどで人に伝えるという取り組みは、以前から行われていましたが、専門家から効果的な発信を学ぶ機会は、「伝える」という行為そのものを、より深く考える取り組みになるのではないでしょうか。

「博学連携という取り組みは、この国で始まってから20年以上経過しています。しかし全体としてうまくいっているかというと、なかなか難しいようです。学習指導要領にないことを取り組むことに不安を持つ教員の方が多いようで、なにを得られるのか明確になっていない、目新しい教材は拒まれることも。

『体験を通して、形にならないものを少しずつ積み上げていく』ということを適切に評価できる素地がなければ、連携の効果は限られてくるように思います。もっとも、自由の森学園に限ってはその心配はありませんね。私たちも、この出会いに新しい可能性を感じています。」そう語っていただいたのは、かわはくの平山良治館長。

石井学芸員は、「将来的に、博物館の展示を貸し出すだけではなく、自由の森学園オリジナルの展示もしていきたい。授業の時間にも関わらせてもらって、オリジナルの展示を作り上げていく。それを今度はかわはくに出張展示してもらうとか。それはかわはくにとっても大きな刺激になることだと思っています」と、両者の関わり合いについて、一歩先の企みを語ってくれました。

館長・農学博士 平山 良治さん

かわはく館長・農学博士
平山 良治さん

ユネスコスクールとは?

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「地球規模の問題に対する国連システムの理解」「人権・民主主義の理解と促進」「異文化理解」「環境教育」を中心とした、 ユネスコの理念を実践する教育機関をサポートするネットワークです。

現在、世界181か国で約10,000校が加盟しています。日本国内では、2015年4月現在、913校の幼稚園、小学校・中学校・高校、大学が参加しています。

オフィシャルサイト

ESD(持続可能な開発のための教育)の推進を通して、より視野の広い学びへ

あたかも地球温暖化による気象変動が国際的に語られている今、このような教育実践は、次世代を担う子どもたちの未来に直結するものだろうと考えています。そして現在、このような取り組みは、世界的に「ESD(EducationforSustainableDevelopment・持続可能な開発のための教育)」という名前で呼ばれ、その必要性が広く認識されています。

「ユネスコスクール」は、そのESDの推進拠点校となる教育機関のネットワークです。自由の森学園は現在、その参加に向けての準備を進めています。ユネスコスクールへの参加によって、国内はもとより、世界中のESDを推進する多様な教育機関との充実した連携が期待されるものです。

学園では、この取り組みを各教科における学びの視野をさらに広げていくきっかけとして、また、学園の教育実践を総合的に位置付けていく機会として、幅広く活用していこうと考えています。

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