自由の森学園 中学校・高等学校 学校案内 2023
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 自由の森学園は、その理念を実現するために3つの教育活動の転換を行いました。そのひとつが授業とカリキュラムの改革です。連関の薄い大量の知識を詰め込む授業から、幹となる本質的なテーマを深く学び取る授業への転換です。一方的な伝達授業を改め、思考、対話、表現を重視することで硬直した受け身の学習観を変える授業を構築しました。また、芸術と表現の教育を重視し、学ぶ喜びに触れ、心の自由を育てる教育を〜自由の森学園の設立〜理念の実現を目指した3つの実践的転換68 激しく変動する21世紀の社会で、10代の子どもたちが学び成長する学校に求められる役割はどのようなものでしょう。言われたことは素直にやるが、主体的に課題を発見し、その解決に向かう姿勢に欠ける。「学力」は高いけれども、学習意欲や学ぶ主体的な動機は希薄。国際的な調査から浮かび上がる日本の教育の課題です。 これに対して、教育界ではアクティブラーニングの導入や記述式入試などの試みが行われていますが、テストとそれへの解答という繰り返しで培われる受け身の学習観が大きく変化するとは思えません。 学ぶことの本質的な喜びを見出し、他者と深くかかわりながら豊かに自己形成していく若者を育てる学校教育の必要を痛感します。 自由の森学園中学校・高等学校は1985年、明星学園小中学校の校長であった遠藤豊らを中心に、「点数序列主義」に迎合しない新しい教育をめざして設立されまし 自由の森学園は、子どもが幸せに豊かに生きていくための知恵を育む場として、日常を丁寧につくる学校です。みなさんがこれまでの日々で培ってきた経験を土台に、教師から差し出される学問や芸術・表現などの未知な世界に出逢い、自分の世界を広げていくことを大切にしています。 中学生という時代は第二次性徴の発現によって、心と体のバランスが崩れる時期です。 大人の体に変化していく中では、嬉しさよりも恥ずかしさや違和感を覚えることもあると思います。この変化に心がついていかない、または不安になることもあるでしょう。変化することは未知なことですから当然のことです。この不安感から、殻に閉じこもったり自分の考えを話すことを恐れたり、容姿を必要以上に気にしたりと、大人から見たら小さな悩みでも、子どもにとっては重大なことである場合もあります。 この殻を破る時の支えは、沢山の“知る”に出逢うこと。学校にいくのは何故? と疑問に思ったことはありませんか。この疑問に対して私たちは「自分と出逢うため」と答えてきました。学問に出逢い、何となく気になっていOnizawa Masayuki た。その理念の支柱となったのが、数学者遠山啓の教育論です。遠山は、違う個性をもつ一人ひとりの子どもの成長を支える教育をすすめるうえで、広く学校教育に浸透している競争原理は妨げになると考えました。競争心を刺激する教育は、簡単に人間をふるい立たせる力をもっているが、その反面、目標を他人におくために自分自身を見失うという問題をもっていると考えたのです。 自由の森学園は、競争原理をテコとせずに、人間としての本来の学びを、授業を通して実現しようと創立された新しい学校なのです。たことが明確になり、これまで知らなかったことに出逢うこと。そうする中で、「自分はこう思う」「自分ならこうする」という意思が生まれ「自分」に輪郭ができてきます。 学ぶことは知的で思考的な作業です。自分の奥深いところと向き合いながら、共に学ぶ他者の考えと出逢うことも授業の大切な場面です。多様なものさしを持つ一人ひとりが、それぞれの考えを出し合いながら、より広くより深く思考を巡らせ、個の学びから対話的な授業空間をつくること。仲間と生み出した新しい世界は、より深い感動に繋がるものです。それはまるで、つぼみが膨らみ美しい花が咲いた解放感に似ているかもしれません。 授業を日常の土台としながら、クラス活動・行事・部活動など様々な時間もあります。中高一貫校ですから、6学年が出逢い、共に活動することも刺激的で面白く、貴重な経験になるでしょう。上級生から教えてもらうことも沢山ありますが、大切にしているのは一人ひとりが学校を育む構成員であること。自由の森学園の生徒たちは、それぞれを大切にしてくれる優しい空気を生み出してくれています。互いを尊重し、信頼しながら同じ目標を目指し、安心して豊かな時間を過ごすことが、「学校が面白い」となるのです。 コロナ禍3年目になりますね。大人以上に子どもの貴重な時間がつくれていないことが心配です。先が見えない難しさはもうしばらく続きそうですが、子どもが生きる「今」を大切に、手探りではありますが、変わらぬ自由の森の教育の営みが豊かな人生へ繋がることを目指していきたいと思っています。鬼沢 真之 理事長菅 香保中学校 校長Suga Kaho

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