自由の森学園 中学校・高等学校 学校案内 2022
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64豊かな感性と高い表現力を育てることを重視するカリキュラムとしました。 もうひとつは、評価方法の転換です。自由の森学園の評価とは、点数で序列化せず、一人ひとりの生徒に対して、授業を担当する教師が文章で記述する方法をとります。本来評価とは、その生徒の到達点を明らかにして、乗り越えていくべき課題を指し示すことだと考えます。 日本の教育の長い歴史の中で当然のこととされてきた順位や偏差値こそ「評価」という考え方は、選別的な役割はあっても、生徒を育てるものではないのです。すべての生徒にとって大切な「通知表」が、数字ではなく文章で記されること、これが生徒一人ひとりを一人の人間として育てるという自由の森学園の教育思想をあらわしているのです。 三つ目の転換は、授業の目標をテストから作品制作に転換したことです。生徒たちは、テストで点数をとるために学ぶのではなく、授業での学びを土台にしてレポートや作品を作成することを目標にします。絶えず与えられた問題を解くという受け身のテスト勉強から、自分自身の理解や問題意識を自分の文脈に沿ってまとめていく創造的・探求的な学習方法をとっています。 これらの教育をとおして、自由な精神を携え、自分自身の人生を切り拓いていく意志と力、他者とともに生きていく意志と力を培っていくのです。今、私たちの教育が果たすべきこと 私たちは、これらの地道な教育活動を創立以来36年間続けてきました。これから子どもたちが生きていく時代は、平和や人権、貧困、環境、エネルギー問題など、さまざまに立ち現れる諸問題に、受け身ではなく主体的に向き合いながら、人間らしく生きていく人間を育てる教育がより求められています。 自由の森学園は、これからも深く考える授業、高い表現をつくりだす授業を通して、「自由と自立」を希求し、豊かな観(もののみかた)を育てる教育を生み出してまいります。MESSAGE 自由の森学園は、子ども・若者達が市民として育つのに欠かせない「深く、豊かに、ともに学ぶ」ことを追求してきた学校です。一人ひとりの生徒のみなさんには、他者と出会い、交わることで生まれる喜びを、たくさん経験してほしいと思います。 アメリカの発達心理学者・エリクソンは「基本的信頼(basic trust)」の重要性を説きました。幼少期に他者や世界への安心感が生まれれば、自己に対しても自尊感情を育むことができるというものです。これは、アイデンティティーを確立する青年期においても、あるいは生涯を通じても大切な要素とは言えないでしょうか。 自由の森学園にも温かな信頼関係を醸成する、さまざまな時間や場があります。一人ひとりが、自由に感じ、考えたこと交換し、学び合う授業の場。100を超える選択講座やスタディツアーに行事づくり。体験学習や課外活動と、実に多種多彩です。 安心して発話し、誰かに頼ったり、あるいは自分を受け入れたりといった体験・経験は、学園を巣立った後も一人ひとりを支え、励ますものだと思います。そして「自分の人生は生きるに値する」と信じ、他者とともにより良い世界を切り拓いてもらえるなら、こんなに嬉しいことはありません。 高校では、これからの歩みを考える時間も豊富です。『学ぶ・働く・生きる―「生き方としての進路」を考える』というイベントでは、学問研究や仕事に真摯に向き合う大人たちから、生き方にも多くの選択肢があることを提示されます。秋休みには農業や福祉、保育などの現場に飛び込んで学習する機会もあります。 他の教育機関との連携も深まっています。地域の飯能市立飯能第二小学校とは、林業体験などで小高連携の活動を続けています。また東京大学の教育学研究科とは「教育・研究交流連携事業に関する協定」を結びました。多様な学び合いが糧になるよう期待しています。 コロナ禍の今、最適解を見つけることがより難しい時代になりました。この先、試行錯誤しながら解を探っていくことも少なくないでしょう。自由の森学園は、社会への適応だけではなく、一人ひとりがたくさんの人と関わりあい、楽しみ、テストのための勉強ではない、豊かに生きるための学びを共につくっていく場であり続けていきたいと思います。 そして保護者のみなさまには、わが子のみならず「わが子たち」が育っていく社会や未来の姿を共に見つめ、思いを馳せていただければ幸いです。菅間 正道Sugama Masamichi高等学校 校長

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