自由の森学園 中学校・高等学校 学校案内 2021
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今、私たちの教育が果たすべきこと64築しました。また、芸術と表現の教育を重視し、豊かな感性と高い表現力を育てることをカリキュラムにおいて大事にしています。 もう1つは、評価方法の転換です。自由の森学園の評価とは、点数で序列化せず、一人ひとりの生徒に対して、授業を担当する教師が文章で記述する方法をとります。本来評価とは、その生徒の到達点を明らかにして、乗りこえていくべき課題を指し示すことだと考えます。日本の教育の長い歴史のなかで当然のこととされてきた順位や偏差値こそ「評価」という考え方は、選別的な役割はあっても、生徒を育てるものではないのです。すべての生徒にとって大切な「通知表」が、数字ではなく文章で記されること、これが生徒一人ひとりを一人の人間として育てるという自由の森学園の教育思想をあらわしているのです。  三つ目の転換は、授業の目標をテストから作品制作に転換したことです。生徒たちは、テストで点数をとるために学ぶのではなく、授業での学びを土台にしてレポートや作品を作成することを目標にします。絶えず与えられた問題を解くという受け身のテスト勉強から、自分自 私たちは、これらの地道な教育活動を創立以来35年間続けてきました。これから子どもたちが生きていく時代は、平和や貧困、環境、エネルギー問題など、不安定化流動化する時代となることが見通されます。このような時代に、さまざまに立ち現われる諸問題に、受け身ではなく主体的に向き合いながら自分らしく生きていく人間を育てる教育がより求められています。 自由の森学園は、これからも深く考える授業、高い表現をつくりだす授業を通して、「自由と自立」を希求し、豊かなものの見方(観)を育てる教育を生み出してまいります。身の理解や問題意識を自分の文脈に沿ってまとめていく創造的・探究的な学習方法をとっています。 これらの教育をとおして、自由な精神を携え、自分自身の人生を切りひらいていく意志と力、他者とともに生きていく意志と力を培っていくのです。MESSAGE 高校で学ぶことの多くは、日常生活でそれほど使うことはないかもしれません。それが小学校や中学校、いわゆる義務教育段階との大きな違いだと思います。 それではなぜ高校で学ぶのか? 人間の成長発達において15歳から18歳くらいまでのこの時期は「青年期」の真ん中にあたる時代だと言われています。「自分とは何か?」「自分はこれからどのように生きていったらいいのか?」と言った哲学的な問いを自問自答しているのもこの頃です。「自分を取り巻いているこの社会とは何か?」「この社会の中で自分はどのような役割を担っていくのか?」社会への問題関心も強くなり、自分と社会との関わりについても考えたりするでしょう。こうした問いについて考え悩むことは、まさに青年期の特徴であり、この問いに向き合っていくことが、この時期の人たちにとってとても大切なことなのです。 しかしながら、現在の日本社会の状況は「学校から仕事への移行」プロセスが長期化、複雑化、不安定化している状況にあると言われています。とりわけ、若者にとっては厳しく困難な状況にあるということができると思います。この青年期の悩みもまた長期化、複雑化、不安定化していると言っていいでしょう。それだからこそ「学ぶということ」が必要なのです。 授業や学びの中で、いろいろな事実や現象と出会い、いろいろな価値観やものの見方と出会い、自分で調べ自分なりの考えをまとめ、それを他者に伝えることにより、またそれについての様々な考えと出会い、自分の考えを検証していく。この繰り返しの中で、誰のものでもない「自分なりのものの見方」というものが作られてくるのだと思います。 自由の森学園は、授業での学びを通じて「自分をつくる」ということを大切にしようと誕生した学校です。いろいろな考え方・生き方があるから、それを選び取るために学ぶ。世間の常識や、マスコミから流されるありきたりの価値観に流されないために学ぶ。自分自身は何者なのか、何を求めているのかを深く探るために学ぶ。つまり、自由に、そして自立した一人の人間として生きるために学ぶのです。 まっとうな青年期を保障し、社会へとつないでいくこと、これが本当の学校の役割であると思っています。新井 達也 Arai Tatsuya高等学校 校長

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