季刊もりのあと別冊2022
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5体育祭の時の一枚。基本的に点数で競うことがない自由の森で、年に1度だけ点数を競う日です。還暦の教員をクラスのみんなでお祝いした時の1枚。コロナ禍で「人間っておもしろい」理系科目への挑戦気づきに満ちた自然科学進路は迷ってなんぼ 今、看護師を目指して、大学で学んでいます。老若男女問わず、人の心身に深く関われる職業だと思っています。 私が、人に興味を持ちはじめたキッカケのひとつはコロナ禍でした。クラスを半分に分けて登校する時期があったことで、それまであまり接点がなかった人とも話をするようになりました。 この学校の生徒は、出身地も見た目もいろいろですが、考え方もいろいろ。改めて「人間っておもしろいな」と初めて実感したんです。 行事づくりに取り組んだのもひとつのキッカケです。体育祭ではソーシャルディスタンスを保ちながら楽しめる「だるまさんがころんだ」を競技にしました。参加している生徒が大喜利みたいにいろんなポーズで笑いを誘って、すごく盛り上がったんです。 どんな状況の中でも新たに生まれること、気づくことがある。コロナも悪いことばかりじゃありませんね。 選択授業は、ものすごく苦手だった理数系科目をあえて選択したんです。もともと絵が好きで、表現活動に力を入れているからと選んだ高校でしたが、「好きなことはこの先も自分でできるだろう。それなら今しか学べない科目をガッツリやってみよう」と決意。いざ取り組んでみると、意外なおもしろさにハマってしまいました。 まず「数学」では、身の回りで数学がどんなふうに役立っているかを知りました。たとえばスマホなんかも応用しているんですね。関数がテーマのときは、教員が水槽を持ってきて、ある現象を数学で説明する実験を見せてくれました。 数式を解くのも、どんなことを考えて式に落とし込んだのか、過程を見てくれます。中学の頃は「数学って何のためにやってるんだろう?」と思っていましたが、数学が存在する理由がすんなりと腑に落ちました。 理科も大好きになりました。選択講座の「化学」は、実験で化学反応の様子を目の当たりにすると、見る目が変わりますね。「生物」では、人間が酸素を取り込んで体内で化学反応を起こし、二酸化炭素を排出しているメカニズムを細かに教えてもらって、改めて納得。自然科学の世界は気づきがたくさんありました。 自由の森では、たとえ初歩的なことを聞いても教員たちはていねいに説明してくれます。だからこそ、苦手だと思っている分野でも、踏み込んでみようかなと思うことができる。何かに興味を持った時に、それを「知らない」とか「できない」ということは、この学校では、引け目に感じる必要はありません。 たくさんの理系の学びから興味を持ったのは「人の体」。進路に決めたのは看護の世界でした。受験勉強も友人と「この現象は不思議だね」と話しながら楽しく取り組めました。もともとは、絵を描いて美大に進学するつもりだったのに、まさかこんなことになるとは。 とはいえ、進路を決定したのは高校3年の夏の終わり。実は看護師か教師か、まったく違う選択をギリギリまで迷っていました。でもここまで悩むことを受け入れてくれるのも自由の森のメリットでもあると思うんです。早く進路を決めるようにせかされる学校だったらここまで悩めない。 理系の学科なら理系の勉強しかしなくなるし、文系から理系にはいけなくなるし、途中で変更したくなっても難しいですよね。限界まで悩めるから本当に進みたい道を見つけられるんじゃないかな。あれこれ考える時間を重ねてこそ自分の選択に自信を持てると思います。「進路は迷ってなんぼ」です。 学びのおもしろさを見いだせない人こそ、ぜひ自由の森へ来てほしい。苦手なものと向き合ってみるって、自分で想像もしていなかった方へ道が開ける一歩だと思う。この学校なら、たくさんの教員がその手伝いをしてくれますよ。

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