季刊もりのあと別冊2022
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17コロナ禍、衛生管理を徹底して開催した体育祭では、黒組団長を務めた。河端さんのお気に入りだった選択講座、「映画制作」。プロの監督が講師となり、プロ用機材で撮影に取り組んだ。企業を支える資格を目指して多彩な講座で視野を広く地元の政治家と対話する授業裏からみんなを支えたい 今、「公認会計士」を目指して大学に通っています。合格率10%。国家資格の中でもなかなか難しいとされる資格です。 公認会計士は、公正な経済活動を陰で支える監査・会計の専門家。主に企業の決算書類などを第三者の立場からチェックするほか、株式公開の手伝いや企業の経営コンサルティングなどを仕事とする資格です。もともと数学が好きだったこともありますし、さまざまな企業に関わることができることも魅力的でした。 弁護士などと並ぶ三大国家資格のひとつなので、「そんなに難しいのに本当に取るの?」と言う人もいますが、大学と専門学校をかけもちして、ダブルスクールで挑戦したいと思っています。難しそうだからといって、さっさとあきらめてしまうのは、なんか違うかなって。コロナ禍で家にいることが多くなり、考える時間が増えてじっくり考えた結果です。 自由の森の特徴を一言でいうと、物事をいろいろな角度から見て、考えることができる学校だと思っています。 全国から生徒が集まって来ることや、みんなで授業をつくることを大切にしていること、行事を生徒がつくることなどが、この学校をそういう場にしているのかな。 とくに数ある選択講座は、新しい視点を掘り下げてくれます。僕は「英作文」「農業」「サンバ」「映画制作」「政治・経済演習」と、興味が湧いたジャンルには、片っ端から挑戦しました。 「映画制作」は、ドキュメンタリー映画を何本も作っている監督が講師を務める本格的な講座です。みんなでオリジナル脚本を書きおろし、監督、演技、衣装、音声、美術、写真と、自分の好きなこと、関心のあることを撮影に活かせます。動画が好きな僕はカメラマンとして参加して、プロの技術を教わりました。プロが使う機材を扱えるだけでも、興奮ものですよ。 公認会計士の資格に関係するかと思って、軽い気持ちで履修した「政治・経済演習」は、いい意味で裏切られました。実際の裁判記録や新聞記事などをもとにみんなで議論する密度の濃い授業で取り上げられるのは、複雑な事例ばかり。生徒の意見を縦横無尽に広げてくれる担当教員やみんなの話を聞く中で、毎回「考え方ってひとつじゃないんだな」と、納得させられていました。 2021年の衆議院選挙のときは、どんな政党があるかを調べ、支持する政党や候補者について意見を交わしました。このときもみんなの意見がバラバラでおもしろかったですよ。政治家にメールを送ってみたことも。僕たちのときは、大学の奨学金制度や国会議員の給料、オリンピックについて質問しました。SNSで連絡を取って直接会った人もいましたよ。 僕は、さらに食品ロスや少子高齢化について、地元選挙区の候補者3人に意見を求めました。返ってきた回答は三者三様です。秘書を通して返信をくれた人、「質問の真意はなんですか」と質問に質問で返す人、メールにうまく対応していない人と、「ははぁ」と思うところが多かった。学ぶ楽しさを実感した授業でした。 僕が通う国士舘大学のキャンパスは、世田谷区のど真ん中にあります。飯能とはまったく違う環境で、最初はちょっととまどいました。始まったばかりの大学生活。まずは一人暮らしと、会計の専門学校とのダブルスクールを軌道に乗せなければと考えています。落ち着いたら、自由の森の時みたいに、学園祭やオープンキャンパスのイベントづくりに関わりたいですね。表に立つより裏方の仕事が好きなんです。うしろからみんなを支える、というのが自分には合っているみたいなんです。

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