季刊もりのあと別冊2021
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数学って楽しいですよ!? 中学まで全然興味がなかったのに、高校に入って数学にどっぷりはまりました。卒業してからもまだまだ楽しみたくて、いま大学で純粋数学を学んでいます。 純粋数学というのは主に代数、幾何、解析からなる、より数理的本質に近づこうとする世界です。いずれは教職を取って、教員になるつもりです。自由の森に戻って来るのもいいですね。まったく興味がなかった自分だからこそ、伝えられる数学の魅力があるはず。「教える」じゃなくて「伝える」ために戻ってきたいです。タンジェントで窓の景色が変わる 数学って、与えられた公式を覚えて、ひたすら数式を解いていくイメージがありますよね。自由の森では違うんです。たとえば「サイン・コサイン・タンジェント」、つまり三角関数です。それを使って教室の窓から見える山の高さが分かるっていうんです。教員が実際にやってみせてから、「じゃあ、みんなで向かいにある棟の高さを求めてみて」って、グループワークになるんですよ。 埼玉県のイラストを渡されて「どうやったら面積を求められる?」と、ノーヒントで考える授業もありました。小学校で習った三角形や四角形の面積の求め方を使ったり、人によってさまざまな方法が出てきます。一見的外れな意見にも教員は耳を傾けてくれて、いろいろな考えを足し合わせて少しずつ答えに近づいていきます。 その授業は、最終的に「積分」を理解することができる授業でした。ただ提示された謎を自分達で解き明かしていたら、それは実は「積分」だったというy=x²のグラフを正方形の紙から切り取る。これを3つ集めると、切り取る前の正方形と釣り合う……。これが積分の公式を裏付ける実験となる。「関数と関数を足す」とはどういうことだろう? グラフをストローで作りなおしてみると、2つのグラフを積み上げるということが実感できる。衝撃。ただ公式を解く日々とはまったく違う、「学ぶ」ということの意味に触れる数学でした。 僕にとって魅力的に映った数学ですが、まだ苦手な人はいるもの。僕はそんな人たちとも数学を通して関わっていきたいと思うんです。教員によってさまざまな「数学を見る角度」 高校には、数学系の選択講座がいくつか用意されています。その中で、教員になれたらお手本にしたいと思う2人の教員に出会いました。 ひとりは「生徒の意見をとても大事にしてくれる人」。生徒が分からないと手を挙げたとき、何に対して疑問に思っているのかをじっくり聞いてから説明を始めます。進度はゆっくりになるけれど、みんなが理解できる授業です。視覚に訴えるのもうまくて、積分の説明に天秤を持ってきて教室を沸かせたことも。しかも僕が「ちゃんと証明できるの?」と、ちょっとイジワルにつっこんだら、数式を使ってきれいに証明してくれました。参りました。 もうひとりは、「自分も数学を楽しんでいる人」。選択講座ということもあって、教科書には出てこない内容も大胆に扱ってくれます。2次関数の値をグラフに書き込んでいくと、放物線のパラパラ漫画になるしかけとか、いま振り返っても唸ってしまいます。僕の自由の森は「授業」だった 数学ばかり推していますが、もちろん自由の森で良かったのは数学だけではありません。 作品に出会って、読むこと、考えること、自分に問いかけ友人の意見を聞くことの面白さを知った日本語科の授業。「単語+文法」に当てはめるだけが翻訳ではなく、書き手の気持ちなどを考えながら言葉を選ぶことに思いを馳せた、英語の授業も印象的でした。 とくに高3では多くの科目の授業が、自分達が生きる現代社会を読み解くような内容だったように思っています。東日本大震災で被災した子ども達への手紙を訳したり、ジェンダー問題について考えたり。確率統計では新型コロナを扱い、「指数関数的に増える感染者数のグラフの形がくずれたら、それが人間がコロナに打ち克った証になるんだよ」という教員の言葉にはちょっと感動しましたね。 僕の自由の森は「授業」だった、と言い切れるくらい授業の中に大切なものが詰まっていました。学ぶことの意味って、「何かのためになる」「将来の役に立つ」とかよりも、自分の心や考え方が豊かになることだと思っています。だから僕は、これから入学する人たちにも大きな声でいいたいです。「ぜひ楽しんで!」って。9

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