季刊もりのあと別冊2021
12/20

自由の森を飛び出す体験が自由の森を飛び出す体験が自分が生きていく「軸」になれば。自分が生きていく「軸」になれば。「おいしい」が響いた農業体験 卒業後のことを考えるキッカケになったのは、高2の夏だったと思います。ひとつは新潟での体験学習でした。田舎暮らしを体験したくて、自給自足の生活をしながら農業を営む瀬谷祐介さんの家に4日間お世話になりました。 そこで待っていたのは、東京ではできない暮らしです。朝目覚めたら、きれいな空気を吸いながらの農作業、食卓にはとれたての無農薬野菜が並びます。卵も鶏が産んだばかりの温かいものを使い、お風呂も薪で沸かします。スマホは電波が届かないのですが、見ようがないとなると、あきらめがつくもの。空いた時間に読書をしていたのですが、あんなにじっくり本にのめり込んだのは久しぶりでした。 そんな体験学習の最終日は、あいにくの雨でした。農作業もできず、時間を持て余していたら「いっしょに料理をしない?」と妻の正子さんに誘われました。作ったのはカレーとチャパティ。緊張しながら瀬谷さんにふるまったら「おいしいよ!」と喜んでもらえて。なんかこういうの嬉しいなぁって思ったことや、この4日間に食と自然の関わりをまのあたりにした体験が、食に携わる仕事を目指す最初の一歩になりました。東北では震災の爪痕を体感 8月には、選択講座「福祉の現場へ」のスタディツアーで、東日本大震災の被災地である岩手県釜石市へ。聖学院大学と共催する復興支援「よいさっ!プロジェクト」に3泊4日で参加しました。 釜石は、9m以上の津波によって海辺の暮らしが破壊された地域です。曲がったガードレールや救助隊が生存者を確認した印などが生々しく残っている街並みには息をのみました。足を運んだのは、多くの子ども達が犠牲になった旧大川小学校(宮城県石巻市)。 「津波てんでんこ(津波が来たら、てんでんばらばらでいいから、いち早く高台へ逃げろという三陸の言い伝え)」を守って、子どもたちが必死に逃げた道を歩いたり、津波被害から生還した語り部さんのお話をうかがったり。現地に行かなければ感じることができなかった INTERVIEW /05渡邉栞さん Watanabe Shiori2020年度卒業。淑徳大学看護栄養学部栄養学科1年。高校2年の夏、農業の体験学習、福祉の現場へのスタディツアーに参加。選択講座「サンバ」で浅草サンバカーニバルに出場した他、毎年行事づくりにも積極的に関わる。現在、医療の現場で活躍する管理栄養士を目指す。選択講座「福祉の現場へ」より。東日本大震災の被災地、岩手県釜石で「釜石よいさ祭り」に参加。ことばかりでした。 釜石のほかにも、障害者施設や児童養護施設などを訪ねたり、授産施設で障害のある方々が作るクッキーのおいしさに驚いたり。ぼんやりと抱いていた先入観をことごとく覆させられる体験には、驚いてばかりでしたね。やればハマってしまう「サンバ」 そんな高2の夏をしめくくったのが「浅草サンバカーニバル」です。選択講座「サンバ」の受講生は「自由の森学園サンバ音楽隊」というチーム名で毎年出場しています。私は「カイシャ」という打楽器を担当。「タカラカタカラカ」というサンバ特有のビートを刻みます。 多くの人がそう思うように、私も当初サンバというと「派手な衣装で踊るアレでしょ……」というイメージしかありませんでした。ちょっと私には合わないかな、なんて思っていたんですが、やってみたらすごく面白かったんです。全員が最初は初心者だから、上手も下手もありません。練習はちょっとキツイ12

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