季刊もりのあと別冊2020
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強制されないから続けられた 高校の入学式直後、もう校庭を走っていました。陸上部の顧問の教員に見学したいと声をかけたら、部員の人たちが集まってくれて、誰かの「じゃあ、今からちょっと走ろうよ」という一言で革靴のまま。翌日には、正式に練習に参加していました。 ずっと走ることが好きで、中学から本格的に中距離走を始めました。でも高校を選ぶときは陸上競技からちょっと距離を置きたくなっていて、ほかにやりたいことを探そうと自由の森に入ったはずなんです。部活動のかたわら、ギターを弾いたり、旅に出たりしましたが、いつも「今日走ったっけ?」とソワソワ。気がつけばほぼ毎日のようにグラウンドに出る自分がいました。 自由の森のことを「やりたいことをやれる場所」と表す人は多いと思います。僕は、それと同じくらい大切なことがあるなと思っていて、それは「やりたくないことは強制されない」ということ。陸上部でも、顧問やコーチからあれをやれ、これをやれと指図されることはなく、「タイムを伸ばすにはどうすればいいか」と、自分たちで練習メニューから考えながら取り組むことができました。 自分のペースで陸上に向き合うことができたから、陸上そのものの見え方も変わって、継続できたのかもしれません。思いがけない選択講座に陸上との接点が 自由の森の近所は山が多くて、アップダウンや景色を楽しみながら走れます。都会の学校でずっと同じトラックをぐるぐる走っていたらつまらなかったな、と思っていました。 選択講座も、僕にとっては陸上競技との接点を感じるものが多かったですね。「健康心理学」でストレスマネジメントを学べたのは大きくて、大会前の気持ちをつくる場面でも応用しました。「中国舞踊」も筋肉の使い方などに共通する部分がありました。「自由の森は卒業前の頃になると、科目と科目のつながりを感じるようになるんだよね」と卒業した上級生達から聞いていましたが、なるほどこれかと。自分の走りを次のステージにつなげていくために 3年間、陸上部で練習メニューを考えてきましたが、さらに速く走るためには、科学的な知識が必要なことが分かってきました。「アスリートとして活躍しようとするなら、スポーツ科学に取り組まなければ」と、大学進学を考えるようになりました。 いくつかの大学から声をかけていただくことができましたが、スポーツ科学の専門学部があり、どこか自由の森と似ている雰囲気がある駿河台大学へ進むことにしました。奥が深いからこそ走る なぜそこまで走ることが好きなのか。ひとつはリフレッシュできること。走り出すと悩みがス〜ッと消えていくのがわかります。その分、溜まっているモヤモヤが多ければ多いほど走る時間も長くなります。最長で2時間ほどでしょうか。 もうひとつは、奥が深いということ。科学の力で、もっと速く、もっと楽しく。林業講座のスタディツアーで訪れた白神山地にて。登山のツアーだったにもかかわらず、なんとそれとは別に空き時間に個人練習。入学式当日に入部した「陸上部」。走ることは、高校生活の中で常に中心にありました。 INTERVIEW 06加治屋 柊吾さん Kajiya Syuugo2019年度卒業。自由の森学園には高校から入学。陸上部に所属し、3年時には埼玉県代表として関東高等学校陸上競技大会の男子800mに出場。現在、駿河台大学スポーツ科学部スポーツ科学科に在籍し、新たな記録をめざして走り続けている。12

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