季刊もりのあと別冊2019
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なにげない身近な風景をアートに 映像作品が好きで、最近ではストップモーションアニメの作家「PES」の独特な世界観に惹かれています。「Fresh Guacamole」という動画はアカデミー賞にノミネートされ、1億回以上も視聴されているとか。長編映画よりもこういったアート性を感じる短編を創作したいと思っています。 動画への興味は小学生の頃からありました。スマートフォンを使えばちょっとしたムービー撮影ができるじゃないですか。4年生くらいからアプリを駆使して動画編集している友だちがいて、すごくうらやましかったのを覚えています。中学は地元の学校に進んだのですが、そこでは理不尽な校則や軍隊のような空気に押しつぶされてそんな元気はありませんでした。自分の意見を率直に発言できる自由の森の高校に進学して、「やってみたい」という気持ちが再び芽吹いてきたんです。 幸いにも、在校中に映像制作会社を立ち上げた先輩のもとでライブ撮影などを手伝い、プロの機材を扱う機会にも恵まれていました。次第に手伝いではなく、自分の好きな映像を撮りたいと有志で撮影するように。誰もいない教室やただ本を読んでいるだけといったなにげないシーンをつないだり、オリジナルのキャラクターをつくって動かしてみたり。いろいろな実験を重ねてきました。プロフェッショナルとの出会いが自信につながった 3年の間に学んできたさまざまな授業も、自分の表現力を高めることにつながったように感じています。自由の森の学びは、「まず、自分で考える」が基本。日本語(国語)の授業では、小説の作品論を通じて言葉の細部について検討したり、要点をつかんだりすることから、文章表現に向き合います。 数学も、正解を鵜呑みにすることはありません。なぜこういう答えが導かれるのか道筋を示してくれて、数学の世界が自分たちの身近に存在するものだと分かると、やっかいな方程式も苦行じゃなくなるんです。 高3では「プロフェッショナルに会いにいく」というさまざまな職業人に出会う企画もあります。この企画で自由の森に来てくれた陶芸家の方の話で印象に残っている言葉があるんです。「言葉にすることで物事のありようが狭く限定されてしまう。それを回避するために言葉ではなくモノで表現する」というのです。「言葉は不幸である」と書いたのは谷川俊太郎さんですが、みんな共通するものがあるのだなと、映像表現に対する思いが深まりました。高1の時に有志映画を制作した時の1枚。初めて触れるプロユースの機材に、緊張しながらもわくわくしていました。 INTERVIEW 03宮ノ下 岳流さん Miyanoshita Takeru2018年度卒業。日本大学芸術学部映画学科映像表現・理論コースに進学。好きな映画監督は大島渚監督とジャン=ピエール・ジュネ。ダークなものを美しく撮る手腕に刺激を受けるとか。大学では映画にとどまらず幅広い映像表現を学んでいる。ここで見つけたのは自分を表現することのすべて6

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