季刊もりのあと別冊2019
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互いを認め合う環境で育めた自己肯定感 小学校のときに経験したのですが「競争」があると人間関係がギスギスすることってありますよね。とくにテストの点数で序列化されると、成績だけで人を上や下に見てしまったり。体育祭以外ほとんど競争が存在しないこの学園では、数字で評価されない分、お互いの良さをいろいろなカタチで認めあうことができます。 たとえば友人の一人に、勉強は少し苦手だけれど染織が得意で、とてもきれいな色を出す男の子がいます。努力家で真面目な彼を見て、すごいなと思っています。逆にまわりの人たちは、私のいいところを見つけ、尊重してくれているように思います。こんな点数で人を計らない場だから、人を人として見つめられる関係があったと思うんです。自分のやりたいことにのびのびトライできた6年間でした。なりきり投票で大人の考えに気づく 中学3年の秋、選挙権年齢が18歳以上に引き下げられたことをきっかけに、テーマ別研究会で模擬投票を企画しました。「選挙できる年齢まであと3年しかない」というリアリティと「でも雨が降ったり、友だちと遊ぶ約束があったりしたら投票には行かないかも」と軽んじる気持ちにちょっと揺らいでいる自分がいたんです。教員の協力も得て市役所から本物の投票箱を借り、ちょっと前の衆議院選の候補者を対象にしてみんなに投票してもらいました。開票したら本当の選挙で最下位だった人が得票率1位。これには驚きました。 あわせて「なりきり投票」も試してみました。実際の選挙では投票者のほとんどが上の世代で、若い人たちは「自分が選挙へ行っても意味がないんじゃないか」と考えています。それなら大人たちがどういう観点なのか考えてもらおうと、主婦や中小企業の社長さんなどになりきって投票してもらいました。立場を変えると自分の考えとはまったく別の候補者を選ぶことがわかって、おもしろかったですよ。 こうした社会的な興味を自然に持つことができたのは、世の中の課題に向き合い、討論を重ねる授業のおかげかなあと思います。心に重く残るテーマが多くて、チャイムが鳴ったあとも「あのときはああ言ったけど、どう思う?」と休み時間に、友だちと話しあうことも。普段の日常会話にも時事問題が出てくることは多かったですね。学園祭の有志企画から心理学へと発展 高校に入ってからは学園祭に夢中になりました。3年間有志で出店して、1年のときはケバブ、2年はケーキ、3年ではパイを販売しました。材料の仕入れから、試作品の製作、調理、原価計算、衛生管理などすべて自分たちでやりとげました。ものを売ると人の心の動き、効果的なメッセージの伝え方や受け取り方などがダイレクトにわかってすごく楽しいんです。ちょっとお店の場所を変えたり、ポスターを工夫するだけでもお客さんの反応が変化します。選択講座「福祉の現場」の復興ボランティアスタディツアーより。草むしりなどの仮設住宅支援活動や、子ども広場の開催などを行いました。選挙もケーキも。広がる好奇心を学びに変えて村岡 由徠さん Muraoka Yuki2018年度卒業。立教大学現代心理学部映像身体学科1年。将来は広告などビジュアルコミュニケーションの世界を視野に入れている。自由の森在学中は学園祭に積極的に参加。有志での出店のほか、巨大なねぶたなどを製作。 INTERVIEW 012

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