季刊もりのあと別冊2019
10/16

足を踏み入れたのは“ヘンジン”が集まる講座!? その講座に最初に出会ったのは高1の時です。僕は自然の中を歩くのが好きだったのですが、ある日の放課後、学校の近くの森の中をのんびり散歩していたら、高2高3の選択講座「小岩井生態学」の一団とバッタリ。森を歩いて自然観察できる授業と知り、翌年度からさっそく受講することにしました。 この講座には “ヘンジン”が集まるといいます…… というとビックリしちゃいますよね。受講者の興味の対象がみんな超ピンポイントなので、自分たちでそう呼んでいます。自然が好きでも、ドングリだけだったり、魚だけだったり、フィールドサイン(動物のフンや足跡、食痕など)だけだったり。僕はもっぱらキノコ専門。そんな一般的に興味を持たれないようなものを孤独に愛していた人たちも、この講座に来れば仲間と出会えます。 そして仲間ができるだけじゃなくて、つながるんです。自然は循環しているから、点と点が線をつくり、やがて面をつくるようにそれぞれの「ヘンジン領域」は関係がある。それを学ぶだけでもこの講座の意味があるのではないでしょうか。森という生命の現場で、それまで素通りしていたたくさんのものに気づけるようになるんです。 他にも、僕が履修する選択講座は自然系がほとんどでした。1年次から履修していた「自然」という選択授業では、間伐や下草刈りを通して森が活力を取り戻す手伝いをします。森の元気を取り戻すことは、土砂災害の防止になるし、きれいな水を守ることにつながる。地球温暖化で問題になっている二酸化炭素も吸収してくれます。3年次には「林業講座」も選択。枝打ちをするなど実際に伐採することを通して、山の問題に向き合います。 「小岩井生態学」もそうですが、どれも自分の肌で感じることが前提のフィールドワークが中心の講座です。いくら知識を得ても手に入らないものが、森の中にはたくさんある。だから森歩きは、一度始めると止まらなくなるんですよね。厳しくも的確な進路対策にふるえる 自由の森自体がそういう考え方だと思いますが、「進路は今の学びの先にあるもの」という思いが強かったので、大学もフィールドワークを重視するところを探しました。その時に見つけたのが、今在籍している東京農業大学です。 とり立てて受験対策をしてこなかった僕は担当の理科教員に「どうやって入ればいいの?」と泣きついてみました。すると、爽やかに「林業の現状と課題が書かれた『森林・林業白書』というのがあるから、それを全部頭に入れれば大丈夫」という助言をもらいました。簡単に難しいことを言います。 なので、他の担当教員にも泣きついてみました。すると、ぶ厚い民間の森林に関する資料を渡されて一言。「選択肢が2つある。あきらめて違う道を探すか、とりあえずやるだけやってみるか」って。つまりそれぐらい僕が思っていたよりも難しい挑戦だった訳です。もう、「やります」というしかありません。泣きべそをかきながら読みこみ、調べる毎日が続きました。僕のそんな様子を知った教員の皆さんも「おお、本当にやるのか!」とおどろきながらも、ずっと受験勉強に付き合ってくれました。そのおかげで、今この大学にいることができています。叩きたい門はとりあえず叩いてみる 自由の森は良い意味で刺激的な出会いがある学校です。気になったら、とりあえず門を叩いてみてください。僕は理科系の門を叩いたけど、どんな門から入っても受け入れてくれるし、思いがけない発見も一緒についてくる。僕みたいに面白そうな教員についていくのも楽しい過ごし方。気になった教科の研究室のドアを叩けば、教員は絶対に応えてくれます。素通りしていた命の現場の意味を知る INTERVIEW 05下堂前 大樹さん Shimodoumae Daiki2018年度卒業。東京農業大学地球環境科学部森林総合科学科1年。自由の森学園には高校から入学。自然全般に興味をもち、選択講座はもっぱら自然系を履修。小岩井生態学のスタディツアーで西表島、林業講座で白神山地、さらには有志で屋久島も訪れた。一番好きなキノコはタマゴタケ。10

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