季刊もりのあと別冊2018春 一人ひとりの生き方としての進路
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とにかくサンバづくし! 高校で履修できる選択講座のひとつに、「サンバ」という講座があります。サンバというと、派手な衣装を着けたダンスを真っ先にイメージする方も多いかもしれませんが、ダンスだけではなく、打楽器を中心とするサンバ音楽の演奏もします。使用するのはスルド、カイシャ、タンボリン、アゴゴ、へピニキなどといった、一般的にはあまり聞き慣れない名前の楽器。どれもブラジルのパーカッションです。私はヘピニキを担当していました。 サンバ講座では、毎年8月に開催される「浅草サンバカーニバル」に出場します。本場のリオ・デ・ジャネイロスタイルを目指すこのカーニバルは出場要件が厳しく、各チームで掲げたテーマに合わせたオリジナルの楽曲や衣装、アレゴリアと呼ばれる山車などを制作して挑まなければなりません。 自由の森のサンバチームは、2014年から「S1リーグ」の出場権を得て出場しています。S1リーグに出場できるのは、全国で8チームのみ。他のチームは経験豊富な社会人チームばかりで、成績次第で下位リーグへの降格もあるなか、去年はなんとか同リーグに残ることができました。 カーニバルが終わっても、ホッとしている時間はあまりありません。秋の間には翌年のテーマ決めが始まり、12月にはオリジナル曲の歌詞をつくり、担当教員の重山さんに作曲してもらいます。春にはダンサーを募集して、夏になればまた練習。衣装のデザインに縫製に山車の制作。思えば高校生活の3年間は本当にサンバづくしでしたね。のびのびと歌う合唱に出会って 私は、高校から自由の森に入学しました。きっかけは音楽祭の見学。みんなが楽しそうに合唱している姿に「私もこの中に入りたい!」と思ったのです。当時通っていた公立中学は服装や姿勢を揃えることを重視され、賞をとるための合唱を必死に練習する学校でしたが、自由の森の合唱はまったく違うものでした。誰もが思い思いの服装で、表情豊かに歌っている姿に本当に驚いたのです。もちろん、点数で生徒を評価しない一人ひとりと向き合ってくれる校風にも惹かれました。 実は私の母は、自由の森学園の卒業生です。どうやら私がそう考えるとは思っていなかったようで、「自由の森を受験したい」と打ち明けたら、公立を選ぶと思っていたと驚いていました。これをきっかけに私が考えていることを母に話す機会も増え、入学相談会への参加を重ねる中、私はますます自由の森しかないな、という気持ちになっていきました。 母も納得し「自由の森には、自由の森でしか体験できないことがたくさんある。やりたいと思ったことはどんどんやってみるといいよ」と言ってくれました。そこで私が選んだのがサンバだったんです。子どもたちと成長していきたい 在学中はサンバの他にも、音楽祭の実行委員に入って、行事づくりにも参加しました。行事はいつも生徒の手づくりで、約束事があるわけではないので、正直大変だしトラブルだらけです。でも意外となんとかなる。本番当日にみんなの楽しそうな顔を見るのはとても嬉しいし、なにより私も楽しいんです。 現在、小さいころから憧れていた小学校教諭になるための学びを、山梨の都留文科大学で深めています。高校までとは違う価値観を持っている人たちと交わる中で、いろいろな考え事をしているところです。 サンバ講座は、卒業生もたくさんサポートしていて、私もいまやそちら側に立っている訳ですが、ここ3年間、夏休みはずっとサンバの準備で学校にこもっていたので、今年の夏についてはひとまず違う過ごし方をしたいな、と思っているところです。まだ何をしようか考え中ですが、海外に出かけてみたいですね。「自由の森でしかできないこと」を堪能した3年間浅草の街並みをパレードする、自由の森学園サンバ音楽隊。表現力を「競う」という不慣れな舞台ですが、楽しみながら演奏することを大切にしながら、毎年好成績を収めています。13

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