季刊もりのあと別冊2017春 一人ひとりの生き方としての進路
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Interview.062016年度卒業。法政大学キャリアデザイン学部キャリアデザイン学科へ進学。生き方をデザインする上で欠かせない「教育」に興味を持ち、学識を深めている。多様な人の生き方にふれる学びは、自由の森学園の学びにも似て、とても魅力的だという。  国際交流で海外の学びに衝撃 私が進学先として選んだのは「教育」を切り口に、現代社会における人の生き方にスポットを当てる学科です。「いい大学へ行けばいい就職ができる」という価値観がすでに崩れている今、どのように学び、働き、生きるのかを考え、自分はもちろん他者の人生デザインにも関われるチカラを養いたいと思います。教員をめざすというより、制度や哲学、生涯学習など、もっと大きなくくりで「教育」を見つめていきたいんです。 このテーマに興味を持ったきっかけは韓国との国際交流。高校1年の夏に10日ほどホームステイし、江華島(カンファド)にある自由の森の姉妹校である「サンマウル高校」の生徒と交流する機会がありました。この学校では自然との共生をかかげて、すべての生徒が自分の畑を持ち、循環型農業に取り組んでいます。自由の森以上に独特なスタイルに「教育ってなんて奥が深いんだ!」と衝撃を受けました。それ以降、海外の教育や学校創設者の理念にも関心を深め、翌年の1月にはサンマウルの生徒と一緒にフィンランドの教育に関する講演会にも参加しました。  選択講座で異なる視野を養う 韓国との国際交流は「韓国講座」という選択講座で行われています。戦後の日韓関係やセウォル号事件、LGBT(性的少数者)といった幅広いテーマについて、グループディスカッションを通して考えていきました。毎年夏に私たちがホームステイをし、冬に韓国からの生徒を迎えていました。 サンマウル高校の生徒は社会の見方が鋭く、私たちにはない視点に驚かされます。たとえば第二次世界大戦のとらえ方なども、ともすれば原爆や空襲など被害の面だけを学習することが多かった私たちに比べ、アジアの植民地化や真珠湾攻撃など加害者の面も指摘してくれます。重いテーマも深いところで話せる彼らと交流し、自分の知識の少なさを痛感したことは大学へ進む理由の一つにもなりました。 相互交流10周年を記念するパーティーにも参加しましたが、受講した卒業生が国際関係のコースに進学したり、サンマウル高校から日本の大学へ進む子がいたりと、この講座が人生を変えるきっかけになることも少なくないようです。偏見や差別的な気持ちが払拭できたという人もいて、あらためて「ステキな講座だなあ」と誇らしくなりました。 私も現地で韓国料理を味わったり、市場でショッピングしたりするなど、学びも遊びもともに楽しむ中で、小さなつながりでもお互い共感し合うことが平和への第一歩だと実感しました。高校3年間を通して、彼らと親しく交流できたことは、とても貴重な経験だったと感じています。  ここでの学びを集約したら  自然に次の一歩になる 私の場合、自由の森での学びは、受験でもダイレクトに役立ったと思っています。2次試験が小論文と面接で、小論文の課題は「若者の社会保障について」。この時、「このテーマは、つまり高校で学んできたこと、そのもののことだな」と思ったのです。若者の社会保障を教育とイコールと考えれば、私がなにより関心のあるテーマでしたし、3年間、社会科や日本語、人間生活科などでディスカッションしたり資料を読み込んだりして取り組んできたことは、なにかしらかの形でこのテーマにつながるものでした。 これは、きっと違うテーマだったとしても、同じように自由の森での学びを集約すれば、自分の考えを形にしていけたのではないかなと思います。小論文の作法は覚える必要がありましたが、あとは自由の森で日々積み重ねたものを出しきるだけでした。考えたことを伝えあうことが当たり前の環境にいたことも、きっと面接試験などで役に立っているのかもしれませんね。 今後、大学センター試験でも記述式の問題ができるといいますし、AO入試や自己推薦制度など入試が多様化する中で、自由の森の生徒が自信をもって臨める場面は増えるのではないでしょうか。 自由の森の学びをプッシュしましたが、自由の森の学び「しか」知らないのでは、私はまだ物足りないんです。これからもっと専門的な学びに触れて、自分の生き方を模索していきたいと思っています。「人の生き方」を前にして教育ができることはなにか考えています韓国講座でお世話になったホームステイ先での1枚。高校3年間同講座を履修しつづけて毎年渡韓し、じっくりと学びを深めていったといいます。藤原 和さん Nodoka Fujiwara12

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