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3吉田ゆか子 さん578期生もりのあとを歩くYoshida Yukako2017年、沖縄で開催されたガムラン祭りより。老人のトペンを演じる吉田さん。うと、自己表現というイメージが強いかもしれませんが、この舞踊劇は、演者が仮面に「自己」を明け渡すといった性格が強いですね。さまざまな種類の仮面には、それぞれ歴史的な言い伝えや役割があり、演者はそれに身を任せる。そして伝統的なものなのに、かなり自由度が高いのです。仮面だけではなく、観客の反応や楽団の演奏など、その関係性のなかで劇が成り立っていくのです。その日の観客や楽団のノリなどによって、演じ方もアドリブでみるみる変わっていきます。自己をゆだねる「仮面」 東京外国語大学の「アジア・アフリカ言語文化研究所」というところで、インドネシアのバリ島に伝わる芸能について人類学的な視点から研究をしています。大学にいますが、研究所なのであまり学生に授業をする機会は多くなく、研究に集中できる立場です。 主な関心事のひとつは「Topeng(トペン)」という仮面。バリの伝統芸能である舞踊劇に登場するものです。博士論文のテーマにもしました。劇とい「自己」を明け渡す仮面が語るもの始まりは突然のバリ行きから バリに初めて足を運んだのは、自由の森学園に在学していた中学3年生のときでした。私は寮に入っていたのですが、当時の寮監さんに誘われたのがきっかけ。同行するはずだった友人が行けなくなったらしく、「行こうよ」と声をかけてくれました。たしかにバリに行ってみたいと言ったことはありましたが、まさかこんなすぐに行くことになるとは……。 と、少し腰が引けながらも、

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